「ただいま〜」って玄関から萩原の声が聞こえたから「おかえりなさい!」って出迎えに行ったら、顔には大きなガーゼ、頭と腕には包帯を巻いて、松田に肩を借りた状態で立ってる萩原がいて玄関先で「きゃーーーッ!?!?」って思わず悲鳴を上げて立ち尽くしちゃう香澄ちゃんがいる。
「な、なに…なんで、その怪我、」って震える声でそうっと近付けば「あー…っと、ごめん。ちょっと、ヘマしちゃった」って萩原が肩を竦める。「へ、ヘマって…そんなレベルじゃないじゃん…!」って香澄ちゃんが言えば「何カッコつけてんだよ。どうせ後からバレるんだからさっさと話せよ、バカじゃねーの」って松田が萩原の肩をグーで叩く。
「いやほんと、大したこと無いんだって。ちょっと、ほら、階段から落ちちゃって…みたいな?」ってヘラリと笑って言う萩原に「階段から!?」って目を見開けば「上からな」って松田が言うから「上から!?」って益々驚きで声が大きくなる。
「ちょっと陣平ちゃん、余計な心配させるようなこと言わないでよ」って眉間に皺を寄せる萩原に「余計な心配って何よ。研二が仕事で危ない目に遭ってる時に何も出来ないんだから、心配くらいさせてよ」ってじわじわ涙が浮かんでくる。
「あーあ、俺しーらね」って肩を竦めて萩原の荷物を玄関に置いた松田が香澄ちゃんの頭をぽんと撫でる。「余裕ぶってっけど、足首やってんだよ、コイツ。肩貸してやってくれ。後、医者にはもう診てもらってて明後日までは絶対安静な。何かあれば連絡しろよ」って言ってくれる松田に「本当に、何から何までありがとう」ってお礼を言えば「後でコイツに酒奢ってもらうから気にすんな」ってふっと笑って帰って行く。
松田を見送って玄関の鍵を閉めて萩原に向き直れば、バツの悪そうな顔をして「…え、っと、」って言葉に詰まってるから「とにかく、風邪ひいちゃうから中入ろう。捕まって、ゆっくりでいいからね」って萩原に手を差し出す。
ゆっくりとした足取りでリビングまでやって来てソファに腰かけた萩原がぎゅっと香澄ちゃんの腕を掴む。「あの、さ…っ、ごめん、心配かけて」って俯いた萩原に「ちゃんと、教えて。私の、何も知らない所で研二が怪我してるなんて嫌だよ」って言えば萩原がもう一度謝る。
それから語られたのは、事件に巻き込まれて階段から落ちた男の子を庇って、歩道橋の階段から転がり落ちたという内容。男の子に怪我は無し。事件による怪我人もおらず、一番の重傷者が自分だったと苦笑いを零した萩原を見て香澄ちゃんが眉間に皺を寄せた。
「そ、っか…病院の先生はなんて?」って首を傾げれば「特に異常は無しだって。ただ頭を打ってるから暫く様子を見て異変があったらすぐ来いってさ。包帯は大袈裟なだけで全然、かすり傷だよ」って言ってから香澄ちゃんの頬を撫でて「…ごめんね。心配かけちゃって。あと、心配してくれてありがとう。俺、本当に大丈夫だから、泣かないで」ってそっと唇を重ねる。
ぽろぽろと安堵の涙を流す香澄ちゃんが「よか、った…よかったぁ…」って泣きながら頬に添えられた萩原の手を握り締める。萩原の無事を確かめるように何度も唇が重なるけど「……キスだけで止めらんねぇかも」って調子に乗って香澄ちゃんの服の裾から手を突っ込んで「この怪我で、なにバカなこと言ってるの…?」って本気で香澄ちゃんに怒られる萩原がいるよ。