最高に楽しいドライブデート

高速道路のサービスエリアで彼氏に置いてけぼりを食らって「……どうやって帰ろう」って小さな声で呟いたら「どうしたの?」って萩原に声をかけられて、イケメンのお兄さんになら騙されてもいいかなって思いながら「彼氏に置いてかれちゃいました」ってへらりと笑いながら言ったら「……マジ?」って驚かれる。

「えっ、置いてかれたってどういうこと?」って首を傾げる萩原に「ちょっと言い合いになっちゃって、お前のこと助手席に乗せたくないって言って置いてかれちゃって。あはは、ほんと、何してるんですかね…わたし、」って話しながら段々虚しくなってきて涙が出てくる。

「なんか、助手席に乗ってて何もしないのは有り得ないらしくて。気は使ってたつもりだったんですけどねぇ」ってぽろぽろ零れてくる涙を拭いながら話をして、ハッとする。

初対面の人に何を喋ってるんだろう、と思って「ごめんなさい、変なこと聞かせちゃって」って涙を乱暴に拭って「あの、ほんと後部座席とかで大人しくしてるんで、乗せてってもらえたりします?」って言えば「勿論。こんなに可愛い子とドライブデートできるなら大歓迎だよ」って萩原がぱちりとウインクをするから「お世辞がお上手ですね」って笑っちゃう。

「よっしゃ。んじゃ出発進行〜!」って軽快に走り出した車はびっくりするほど快適で「暑いとか寒いとかない?」とか「眠くなったら寝てもいいからね」とか彼氏とは全然違うドライブをしてくれる優しい萩原にじわじわ涙が溢れてくる。

「私、車の免許持ってないんです」って香澄ちゃんが話し始めて、免許を持ってないから何が正解で何が間違いなのかが分からない。車が来てないか見てろって言うから見ていたのに言うのが遅いと怒られ、エアコンやカーナビの操作も言われる前にやれと怒られる。

欠伸をしようものなら不機嫌になられて、運転してやってるんだから金くらい出せと言われていた。「さっきも、気利かせて飲み物くらい買ってくるのが普通だろって怒られて、買いに行って戻ってきたらお茶の気分じゃなかったらしくて……」って一瞬言葉を詰まらせたら「それで、もう助手席に乗るなって言われたの?」って萩原の強ばった声が飛んでくる。

ハッとして「あっ、えと、ごめんなさい…!ほんと、気使えないのに、こんな…助手席乗っちゃって…!」って泣きそうになりながら謝れば「君は一つも悪くないよ。悪いのは全部君の彼氏。俺も車運転するの好きだし、彼女とのドライブも良いな〜って思うけどさ、彼女にそんな顔させて、そんなに悲しい思いさせるのは絶対間違ってるよ」って優しい声で返される。

「会ったばっかりの奴にこんなこと言われるの嫌かもしれないんだけどさ、別れちゃいなよ。そんな彼氏」って萩原がまっすぐ前を見ながら静かに告げる。「別れた方が良い…ですかね」って呟いたら「うん。んで、そいつのことは綺麗さっぱり忘れて、俺と一緒に最高に楽しいドライブデートしよう」って言われてびっくりして萩原を見る。

楽しそうに笑った萩原に、新しい恋が始まるような気がした。
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