初めて自分の意志で人を殺した日、気付いたら香澄ちゃんの家に来ていた降谷が「……急に、悪い」って謝ったら「ううん、全然。丁度ね、お風呂入ろうと思ってたとこだったの。沸いてるから零くん先に入ってきていいよ」って笑顔で迎え入れられて「……あぁ」って戸惑いながら返事をする。
お風呂から出てリビングに行けば「おかえり。お水飲む?麦茶もあるよ」って笑いかけられて「……水で、いい」って返したら「はぁーい。あ、零くんご飯食べた?ちょっとお腹すいちゃってさ、一緒に深夜のラーメン付き合ってよ」って香澄ちゃんが楽しそうに降谷に笑いかける。
「こんな時間に?」ってふっと笑えば「いいの!今日は零くんいるから!共犯だね」って香澄ちゃんが笑うから堪らずに腕を引っ張って抱き締めちゃう。肩口に顔を埋めて目一杯息を吸えば、香澄ちゃんの柔らかい匂いが胸いっぱいに広がって、降谷の心が落ち着いていく。
「ふふっ、今日はあまえんぼさんの気分ですか?」って笑いながら背中をとんとんって撫でてくれる香澄ちゃんにじわりと涙が滲みそうになって唇を噛み締めて耐える。
「……僕と、共犯でいいのか?」って震える声で聞いてくる降谷に何も分からないけど、何かはあったんだろうなって察した香澄ちゃんが優しく笑って「うん、いいよ。零くんと一緒なら、何でもいいもの」って返せば降谷が息を飲む。
ガバリと体を離して「僕が、人殺しだったとしても?」って瞳を揺らす降谷に、香澄ちゃんがきょとんと目を瞬かせてから「零くんは意味の無いことはしないでしょ」って揺らぎの無い目で笑って、降谷の頬を両手で優しく包み込む。
「言ったでしょ。零くんと一緒なら、何にだってなるし、どこにだって行くよ」って微笑む香澄ちゃんに「行き先が、地獄でもか」って言えば「あははっ、零くんとなら地獄もきっと楽しいね」って声を上げて笑ってくれるから今度こそ涙が我慢できなくて香澄ちゃんを抱き締める。
「苦しいよ、零くん」ってくすくす笑う香澄ちゃんに「うるさい、お前のせいだろ」って降谷が泣いているような鼻声で言うから「またすぐ私のせいにする!も〜しょうがないなあ」って香澄ちゃんが嬉しそうに降谷を抱き締め返す。
香澄ちゃんがいれば迷わずに歩いて行ける。何があっても立っていられる。「全部、香澄のせいだ」って肩口に額を押し付ける降谷を香澄ちゃんは静かに抱き締め続けた。