唇、離してないよ

酔った萩原が「ちゅーしよ」って迫って来るんだけど、お酒臭いし歯磨きしちゃったから嫌で「い〜や〜!」って頑張って押し返すんだけど全然ダメ。手で萩原の口を覆って「私もう歯磨きしたからだめ!」って言ってるのに、手のひらをべろっと舐められて思わず手を離しちゃう。

「ひゃあ!?い、いま、舐め…!?」ってびっくりしてたら「そこに香澄ちゃんの手があったから…」って申し訳なさそうに言われて「理由になってないよ?」って首傾げちゃう。

「もう一回歯磨きしたらいいじゃん」って不満そうに唇を尖らせる萩原に「面倒だからやだ」って返せば「俺のちゅーとどっちが大事なの」って言われるから「酔っぱらって無い研二くんからのちゅーは大事かな」って苦笑い。

久しぶりにめっちゃ酔ってるなあ、と思いながら「お水飲もうよ。顔真っ赤だよ」って言うんだけど「香澄ちゃんがちゅーしてくれなきゃ無理」ってぎゅうぎゅう抱き着いて駄々こねてるからお手上げ。

「分かった。一回だけだよ」って萩原の背中をとんとんって叩けば、ガバッと勢いよく顔を上げた萩原が「うん、一回だけね」って嬉しそうに笑って唇を重ねてくる。すぐに離れようとしたのに、後頭部に回った手にがっちり押さえ込まれて動けないままキスが深くなっていく。

息が苦しくて、何度も萩原の胸元を叩いて離れて欲しいって訴えてるのに全然聞いてくれなくて、ガクッと膝から力が抜ける。その場にへたり込んだ香澄ちゃんを追いかけるように萩原もしゃがみ込んで、何度も何度も唇を味わう様にキスをする。

「いっかい、ね」って唇をくっ付けたまま、ニヤリと笑った萩原のキスは止まらない。舌を絡める深いキスで呼吸が苦しくなってくると、下唇を食むようなキスに変わって呼吸が出来るようになる。呼吸が落ち着いて文句を言おうとすると、すぐに唇が塞がれて深いキスに思考が蕩ける。

ようやく解放された時にはラグの上に仰向けに寝かされてて「はは、香澄ちゃんとろとろだね」って萩原がぺろりと舌なめずりをする。「い、っかいって…!いった、…っ、!」ってぜぇはぁ、と荒い呼吸をしながらも抗議の声を上げれば「だから一回じゃん。唇、離してないよ」って萩原がくすくす笑って、親指で唇をするする撫でてくる。

「もう一回、ちゅーしていい?」ってこてん、と首を傾げた萩原に「……だめ」ってぷいっとそっぽを向けば「なぁんで」って首筋に萩原の鼻先がすり、と擦り付けられる。びくっと肩を震わせて萩原を見れば「ちゅーさせてよ」って言いながら唇を撫でていた親指を口の中に入れてくる。

当然萩原の指を噛むことなんて出来ずに、されるがままになっていれば「かぁわいい」って萩原がとろりと甘く微笑む。さっきまで香澄ちゃんの口の中で好き勝手していた親指を、見せつけるように口に含んだ萩原がにこりと笑う。

「香澄ちゃん、ちゅーしよ?」って眦を下げて微笑んだ萩原に抗うことなんて、もうできない。「……ちょっと、だけね」って頷いたが最後、ちょっとでは済まないよね。
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