その時が来たら、

「香澄さんはいました?初恋の人!」って梓に話題を振られて「初恋…は覚えてないけど、学生の頃に好きだった人はいましたよ」って笑う香澄ちゃんの姿を安室は微笑ましく見ていた。

「きゃ〜!どんな人だったんですか?」って楽しげな梓に「すっごくカッコよくて、男女問わずモテモテで、好き…というより憧れみたいなものもあったのかもしれないです」って肩を竦めて何とも言えない顔で笑った香澄ちゃんに安室が小さな違和感を覚える。

「その方とは、今も連絡取ったりしてるんですか?」って安室が聞けば、香澄ちゃんは分かりやすく視線を泳がせてへにゃりと眉を下げて「告白する前に振られちゃったので、私が連絡先を変えちゃったんです」って言うから「えっ」って思わず安室と梓の声が重なる。

「告白する前に…って…」って梓が恐る恐る聞けば「嫌われてた訳じゃないと思うんですけど、ある日からぱったり連絡来なくなっちゃって。私から連絡しても返事無いし、元々予定してた一緒に出かける予定だった日もすっぽかされちゃって」って肩を竦めて香澄ちゃんがへらりと笑う。

「最初は、優しい人だから何か事情があるのかなって思ってたんですけど、半年待っても音沙汰無くて」って笑った香澄ちゃんがアイスティーを一口飲む。

「だから、もう忘れようと思って連絡先も変えたんですけど…」って言葉を詰まらせた香澄ちゃんが困ったように眉を下げるから「忘れられないんですね、その人のこと」って梓もしゅんと眉を下げる。

「勝手に期待して、勝手にショック受けて…自分から連絡先を変えて逃げ出したのに、まだ忘れられないなんて…改めて話すとどうしようもないですね」って自嘲するように笑った香澄ちゃんに「そんな事ないですよ。事情があったとしても連絡も無しに香澄さんとの約束をすっぽかしたのはその彼ですから、香澄さんがショックを受けるのは当然です」って安室がにこりと笑う。

「それに、そんな事をされてもその彼を信じたいと思える香澄さんの優しさはどうしようもない、なんてこと無いですよ」って優しい顔で香澄ちゃんの前に新しいアイスティーを置いた安室が「その彼を本気で探したいと思った時には、お手伝いしますよ。探偵として、ね」ってぱちりとウインクをするから「……ありがとう、ございます。その時がきたら、安室さんにお願いしますね」って頬を緩めた香澄ちゃんが寂しげに微笑んだ。
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