分かってねぇなぁ…

飲むだけ飲んで酔っ払った萩原が始めたいつものあの子の話に、降谷を筆頭に全員が「またか…」って顔をする。

「防護服着ないで爆弾解体して吹っ飛んだテメェの自業自得だろうが」って松田が言えば「そんなの分かってんだよ…でもまさか連絡先変えてるなんて思わねぇじゃん…」って萩原が机に突っ伏してめそめそと泣き言を吐き出す。

「あの子が高校卒業したら告白しようと思ってたのに…告白する前に振られた…」って言う萩原に「振られた…と言うか、約束すっぽかしていきなり音信不通になってるんだから、どちらかと言えばお前が振った側だろ」って一番痛い所を突いた伊達に萩原が小さく唸る。

「進学先とか聞いてなかったの?」って尋ねた諸伏に「……内緒って言って教えてくれなかったから知らない」って萩原が小さな声で呟いて「どこにいるかも分かんないし、連絡も取れないし、街中でも全然会わないし…」って自分で自分を刺し始めた萩原に全員が苦笑いをする。

「何年かかっても絶対見つけて告白するって決めてんだ…おれは…」ってぶつぶつ言い出した萩原に「もし他に男がいたらどうするんだよ」って降谷が聞けば、ガバリと顔を上げて据わった目をした萩原が「は???」って言うから全員ちょっと引く。

「あの子に???男???絶対許さないけど???」って本気の顔でこてんと首を傾げた萩原に「……お前、法には触れるなよ」って降谷が引き攣った顔で言えば「ははっ、知ってるかゼロ。バレなきゃいいんだよ、バレなきゃ」って萩原が笑い出すから全員薄ら恐怖を感じるし、萩原にここまで執着されている会ったこともない女の子を可哀想に思わずにはいられない。

「お前…それで嫌われたら元も子もねぇだろ」って嫌そうな顔で呟いた松田に全員が頷けば「分かってねぇなぁ…あの子はそんな子じゃねぇんだよ」って萩原がとろりと眦を下げる。

「…ちなみに、どんな子なの?」って諸伏が恐る恐る尋ねれば「ん?俺のことが大好きで、優しくて、ちょっと押しに弱いかぁわいい子」って萩原がどろりと欲を孕んだ瞳で微笑む。

その場の全員が「あっ、これもう手遅れだ」と思わずにはいられない萩原の表情に苦笑いをしながら、どこかで聞いた話だなと降谷は思った。突然の音信不通と、約束のすっぽかし。萩原の話からすると、当時18歳だったその子は、今は25歳。

話の内容も年齢も、何もかもがポアロの常連であるあの子と合致する。仮に、もしも、本当に仮に萩原の思い焦がれている女の子が彼女だったとしたら…とそこまで考えて降谷は頭を振る。

確信を得た訳でも無いのに、期待をさせるのは可哀想だと自分を無理やり納得させた降谷は頭をよぎった考えに蓋をして胸の奥にしまい込んだ。
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