tori


掴み所のない同室者


海向は部屋割りQRコードからエントリーナンバーを入力し、部屋番号を確認。
3人一組とは聞いていたが、相手が誰かまではこの時点ではわからないシステムなのだろう。
面倒臭いが決められた部屋に行くべきなので、乗り気はしないが足を進めるのだった。
島に作られただけあって学生寮の中は広く、17階建てのワンフロア10部屋となっている。
一部屋に3人で共同生活する為、バスルームやトイレ、キッチン、リビングなど合わせると隣室との距離凄まじい。
この設備を充実させるには、島でもない限り厳しいのだろう。
部屋へ行くまでの移動では、かなりの人数の合格者とすれ違った。
まるで動物園のパンダになったかのように注目を浴び、海向の機嫌は最悪である。
エレベーターも中央にあり、向かい合うように20個設置されており、そこまで混雑にならなそうだ。
エレベーターから出ると階によって異なるのだが、学生なら志望したジャンルによってクラスが別れ、練習生や食事専用レストラン、教員室、医務室があり、その周りを四角に囲うように最下層からブロンズ、中層がプラチナ、最上階がゴールドとなっている。
あり得ない規模なのに、これはあくまで今回のオーディション合格者の住居である。
その為、今回生活して行く上でseycoに所属する他のアーティスト達とは違う居住区な為、出会う確立はかなり低いだろう。
基本、ここで生活して行けるよう手配されており、日常品や必需品、その他諸々はネット購入するかseycoが契約してるタブレットからの注文となる。
そんな説明を読んだ海向は、更にイライラ上昇中であった。
長たらしい説明、細かいルール、面倒臭い共同生活、そのどれもが無理に等しい。
最上階に着き、やっとひとりの空間となる。
そこでようやく、盛大な溜息をつけた。
どこに行っても人ばかり。
そして海向のこの外見だ。
そりゃ、周りがほっとく訳がない。
声をかけてくる者はいなかったが、それでも興味本位、下心、嫉妬心、嫌悪感、好意など様々な感情が汲み取れた。
ただでさえ人混みが苦手なのにオーディション2位となって、更に有名になったものだから、これからの日常が平和でない事を悟る。
何度目かの角を曲がり、部屋番号が近づくとそこには知らない男が立っていた。

「そこ、おられると入れないんやけど」

イライラしながら海向が声をかければ、長身細身のハーフアップした髪の長い男が視線を向ける。
色白で色素の薄い茶色の瞳をし、はっきりとした二重に整った顔立ち。

「……きみ、誰?」

目には光がやどっておらず、海向を見ても顔色ひとつ変わらない。

「人様に名前聞くなら、自分から名乗れや」

海向は自分よりも20cm程も高い男に不機嫌さを隠さすに言う。
自分から声をかけたのにも関わらず、相変わらずの性格である。

「……浅間せんげんりつ

一瞬呆気に取られ、数秒程固まる。
そしてすぐに正気に戻り、そこは名乗るんだと思う海向だった。

「……名乗ったよ。そっちは?」

律は何も映さない目でじーっと見つめた。

「連城海向」

教えたくないが、ちゃんと名乗られたなら仕方ないと渋々口にする。
自分から声をかけたにも関わらず、この有様だ。

「……ふーん、同室の人か。よくわからないけど、よろしく」

掴み所のない男だ。
海向にまるで興味ありませんと態度からありありと感じる。
元々、同性からアプローチされやすい彼にとって、律みたいなタイプは初めてだった。
環のように素直で親しみやすいのも初めてだったが、ここまで自分に興味ない反応は珍しい。
それはそれで同室としてやりやすいな、等思うのだった。

「仲良しこよしせんけど、それなりによろしく頼むで」

上から目線の海向に、何も気にしてなさそうな律。
この2人、案外相性が良いのかもしれない。


2025.02.17

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