女王様と番犬※R15
※かるいR15、性的表現あるので、苦手な方はスルーして下さい。
部屋へ入るなり、やはり違和感が拭えない。
スマホを取り出して、環のラインを見返す。
何故社長のラインを知っているのか。
いくらオーディション合格1位だとしてもこんな事はあるのか。
そんな疑問が海向の中で渦巻く。
どちらかと言えば他人への興味が薄い自覚はしている。
そんな自分がプライベートの時間になって、誰かひとりを気にかけたりするなんて今まで一度たりともなかった。
何故なのか全く検討がつかない。
けど、確実なのは佐野環と言う人間を気に入ってしまったからだろう。
考えても仕方ないとばかりに、ラインの通話ボタンを押した。
何度も呼び出し音がなり、全く出る様子がない為切ろうとした所ようやく繋がる。
「環、今どこに…」
おるん、そう言葉にしようとすれば、電話口から激しい息遣いと共に微かに聞こえる喘ぎ声。
「……?」
それが環から発せられたとすぐにわかる。
耳にダイレクトに響く甘い声。
背筋がゾクゾクする程に艶やかな響き。
『…海向っ…!助けっ…ぁっ』
自分の名前を呼び、助けを求めた後に聞こえる吐息混じりの喘ぐような声。
「っ…おい、環っ!!」
海向がただ事ではないと大声を出せば、くちゅくちゅと聞こえる粘着音。
『ぃ…やぁっ…ぁ…!』
まさに情事そのものを連想させる嬌声と音。
『ふっ…んっ…、…ゃ、めっ…!』
耳に聞こえる環の甘い声に、海向の喉が自然と鳴った。
そんな色っぽい声で啼かれたら、いくら同性であっても変な気持ちになってしまう。
ぞくりと体が震えるのがわかる。
先程の光景が脳裏に浮かんだ。
艶やかな色気を放つ環。
男に対して性的対象として見て来た事がなかった海向には衝撃的な姿である。
『…環くん、ダメだよ…。電話なんて出たら…悪い子にはお仕置きしなきゃいけないね…』
環の他に人がいるなど想像すらしていなかった。
いや、助けてと言った時点で出来たのかもしれないが、耳に入ってくる甘い声に冷静な判断が出来なかったのだ。
何が起きたのか。
そこで何が行われているのか。
海向の頭が真っ白になった。
環はひとりではない。
男の低い声がしていた。
まさか環は同性に襲われているのかもしれない。
それを証拠に、何度も拒絶の言葉を放っているではないか。
そこでぶちりと電話が切れた。
海向の瞳は動揺を隠せず、揺れ動く。
幼少期から男からそう言う目で見られていた海向だからこそわかる。
胸から上がってくるような吐気と背筋が冷える程の寒気。
あんな体験をするのは二度とごめんだ。
環を今すぐ助けに行かなくては。
ドアを蹴破る勢いで海向はすぐさま走り出し、昂輝の元へと急ぐ。
「おい!海老名!着いて来いや!」
バーンと昂輝の部屋のドアを開けたかと思えば、命令口調で告げる。
「あぁ!?」
昂輝は部屋の中心でダンスしており、彼が志望するものが今わかった。
だが、そんなのどうでも良い。
「緊急事態や!その欲求不満ぶつけるん相応しい場所、連れてったるわ」
そんな言葉にのらされる程、馬鹿ではないだろう。
けど、今の海向にはこんな言葉しか思い浮かばなかった。
「はっ…!てめぇが相手してくれんのかよぉ?」
いや、想像を上に行く程の馬鹿である。
全身筋肉で出来ているのだろうか。
単細胞と言っても過言ではない。
喧嘩とダンスだけが生き甲斐なのだろう。
「まぁ、そないな感じやな。俺ひとりじゃアカンかった時の二番煎じや。暴れてみたいやろ?」
海向はにやっと人の悪い笑みを浮かべ、環が先程向かって行った社長室へと駄犬、いや、番犬を連れて行くのだった。
さながら女王様と番犬。
2025.02.22
- 17 -
*前次#
ページ: