出会い
※この物語は多分?固定カプ中心の脇カプとなってます。色んな矢印が主人公やそれ以外にも向けられており、一応not総受けです。非凡言うてますが相変わらず主人公の影薄く、性格は迷子で何だかんだ流されビッチになりつつ、周りのキャラが目立つと言う不祥事中。多分、主人公よりも他キャラへの愛があるのかもしれない説。バンドや音楽、芸能などの知識なく、そこら辺の描写もほぼ省いて都合良く進みます。R15、R18、精神世界、残酷な表現、モブ攻、攻の受けシーン、脇カプなど今後含まれます。苦手な方はスルーして下さい。
(俺は今日の為にたくさん努力してきた!あの人と同じステージに立つ事だけを夢見て、全力でこのオーディション勝ち取るんだ!)
佐野環15歳。seyco entertainment主催のオーディションに参加し、合格したらミュージシャンとして生きていく事を両親に許された。
もし今日ここで脱落したら、近所の商業高校に通い、両親が営む惣菜店を継ぐ事は決定事項である。
何が何でも受からなくてはならない。
幼い時からずっと憧れていたioriのファンで、彼のような人になる為に頑張って来た。
オーディション合格すれば無条件でioriが主席で卒業した星光学園に通う事が出来、全寮制でseyco entertainmentの練習生や所属アーティスト達がいる宿舎もある。
環はごくごく平凡な見た目できらびやかな世界とは無縁な人間だが、誰よりも根性と情熱は負けずにここまで来た。
必死でボイストレーニングをした結果、透明感ある艶やかな歌声に聴いた人間は魅了されてしまう。
見た目が平凡なだけに、これ程までに色気ある歌い方をわずか15歳の少年がしてしまうものだから、驚愕である。
けど、本人は全く気づいていなかった。
少しだけ人より上手いだろうレベルで、このオーディションに参加したのだから。
努力、気合い、根性で来たので、気持ちだけは通じるだろうと。
この物語は、そんな平凡な少年のシンデレラストーリーなのだった。
「ちょっと退いてくれへん?そこ、通れへんやろ」
関西弁が背後から聞こえ、環は振り返る。
するとそこには美少女かと見間違える程の美しい少年が立っていた。
金髪のゆるふわツイストのセンターパートで、ぱっちり二重の可愛らしい顔に環は言葉を失う。
seycoの男性グループオーディションの為、女子がいない事は確実だ。
それなのにこの可愛らしさはどう言う事なんだろうと思う程だった。
「…わ、…すみません」
環は目の前の少年のオーラに圧倒され、後退る。
美少年はその様子にやや呆れ、うんざりとした視線を送った。
容姿が人より優れており、幼少期から女の子と間違われ続けたからだろう。
環の反応があまりにも面白くない。
むしろ汚物を見るような視線へと変わっていく。
「そこにぼーっとしとったら、通行の邪魔やで。ずっとそこにおって、自分、偉い余裕やないの。このオーディション舐めてん?」
目を細め、不機嫌さを隠す事なく嫌味を言う美少年に、環は一瞬何を言われたのかわからずにいた。
それがまたかんに障ったのだろう。
ぎろりと睨みつけるように環を凝視した。
視線の意味に気づき、環の体が微かに震える。
「……連城、そこまでにしてやれ。そいつ、悪くないだろ…」
そこに背後から低音の凛とした声がし、美少年の目が少しだけ和らいだ。
「…いくらギターが重いからって、イライラするな。こんな所じゃ、誰だってどうして良いのかわからないだろ…。だから先に搬入しとけと言ったのに…」
落ち着いた大人っぽい声に、環が振り返るとそこには長いであろう髪を一つでまとめ、黒髪金色メッシュのゆるふわロングをセンター分けをした一重のイケメン青年が立っていた。
ミステリアスな雰囲気と切れ長の一重が印象深く、長身でいて黒を全身にまとったコーデがとてもオシャレである。
「人様に大切なギターなん預けられへんわ。傷ひとつでもつけられた日には、俺様の全てをかけて葬ったるわ」
青年は額に手を当て、相変わらずだなと苦笑いした。
「…えーと、そこの…」
環に向かって青年が名前がわからないから考えていると、ピンと来たのか自己紹介をする。
「佐野環です。ヴォーカル志望の15歳、よろしくお願いします」
ぺこりとお辞儀をし、青年は目元を少しだけ和らげ頷いた。
ぽやぽやしてそうなのに、空気は読めるのかと感心する。
「…挨拶遅れて、すまない。わかってくれて感謝だ。俺は折川泉水、ドラム志望の18歳。よろしく。そして、こいつは…」
言いかけて、それを美少年が遮る。
「ふーん…、手ぶらやからそうやろ思っとたけど、ヴォーカル志望ねぇ…。へぇ?自分、歌えるん?是非聞きたいわぁ。せやかて、ぼーっとしとるのに、ホンマ歌えるん?……まぁ、礼儀正しい人間は嫌いやないで。連城海向、15歳、ギター志望や。仕方ないから、よろしゅうしたるわ」
先程までの視線が嘘のように解け、礼儀正しい環を少しだけ見直したようだった。
「…人混み苦手だからって、誰彼構わず敵意むき出しにするなよな。これから共に戦うライバルなんだから…勝負はオーディションにかけろ…」
泉水の言葉に、海向がバツの悪い顔をする。
反論する余地もなかった。
「俺、田舎から来たから…全くよくわからなくて…。連城くんや折川さんが話かけてくれなかったら、途方にくれてたから、逆にありがとうございました。こうして知り合えたからには何かのご縁だと思うし、改めてよろしくお願いします」
にこっと微笑む顔に嘘偽りなどなく、本当に安心しきってる様子に泉水と海向は微かに目を見開いた。
初対面で嫌味っぽい喧嘩売られて怒らない筈がない。
自分だったら、苦手意識、または嫌いになってるだろうと泉水は思う。
環のこのメンタルはどこから来るのだろうか。
そして海向に関しては、こんな純粋な笑顔を見たのは久しぶりだった為、不覚にも狼狽えてしまった。
自覚してる部分はあるが、いつもあんな感じで人に絡んでは遊んで戦意喪失、または挑発して楽しんでいる為に嫌煙されたり、怒らせたりして敵を作りやすい。
はなから仲良しこよしするつもりはないから、気にした事はなかったが、あまりにもピュア過ぎる環の反応にどうしたら良いのかわからない様子だった。
「え…、佐野、気にしてないのか?…連城のあれを喰らって…本当、凄いな…」
泉水が心配そうに覗き込む。
自分は苦労性だから、胃が痛くなるよに、と。
本当に気にした様子もなく、ニコニコと頬を染めて、嬉しそうに笑うから、こちらまで何故か笑ってしまう。
自分より3歳年下の少年がとても可愛らしく見え、思わずサラサラした綺麗な黒髪に手を伸ばし、優しく頭を撫でた。
「?」
環はきょとんとした顔をするが、泉水の優しい笑みを見て、更に嬉しそうに頭を泉水に向けて撫でてと言わんばかりに背伸びをした。
それがあまりにも可愛くて、泉水の頬が更に緩んだのは間違いない。
本来年下とはこのように可愛い生き物なのか。
海向をずっと相手して来たから、初めて庇護欲と言うか、癒やしと言うものを感じていたのだった。
本当、泉水は苦労性である。
「あまりよくわからないけど、俺もぼーっとしてたから、ギター持ってたら重たくて通してって言いたくなっちゃうかなって。」
参ったなと言うように頭をかいて照れる様に、海向は毒気が抜ける。
こんな事で戦意喪失したのは初めての事だった。
「……へぇ?根性あるやないの、自分。気に入ったわ」
海向が環の目の前に来て、楽しそうに笑う。
「下僕にしたってもええで」
「ううん、大丈夫です」
環の即答に、泉水と海向は大爆笑。
そして環は共に切磋琢磨出来る友人が出来た事にほくほくな気持ちだったのである。
オーディション前に好敵手兼友人が出来ました。
続くか続かないかわからない話。書いてて楽しかったら、続くかもしれません。とりあえず、お試し運転(笑)読んでくれて、ありがとうございました。
2025.01.28
- 4 -
*前次#
ページ: