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脇役、古郷新の1日はここから始まる。
自室なのに何故か人の気配があった。
目をあけて恐る恐る、広くもないベッドの隣の空間へと視線を向けた。
そこにある筈もない温もりを感じたからだ。
「おはよう」
爽やかな笑顔を浮かべた超絶イケメンこと、御門可梛が当たり前のように新の寝るベット、しかもシングルタイプの少しの隙間に寝そべっていたのだった。
「……あ、うん、おはよう?…わかってた、わかってたけどぉぉぉ!!!また勝手に入ってきてるじゃんかよぉぉ!!どうなってるの、俺の部屋のア○ソック!?って、普通に寛いでるしぃぃ!!!」
新はひとりバタバタと手足を動かし、器用にツッコミをしながらも恐怖に体をぶるりと震わせる。
「ははっ…、今日の新も可愛いね」
弧を描いたように目を細め、優しく微笑む。
まるでその視線の甘さから糖尿病になりそうな勢いである。
まぁ、実際にはならないのだが。
どっちだよ。
「え!?ガン無視!?俺の言葉完全スルーなんだけどさ、いつも思うけどどうやって侵入してるのぉぉぉ??ってか、絶対やる相手、俺じゃないからね!?これ、本当に俺じゃないんだよぉぉ…!!!どうなってるんだ、あり得ないぃぃ…」
そう、自分でも自覚してる通り、新はあくまで脇役であり、傍観者なポジション。
この学園に至っては特に平凡中の平凡。
キングオブ平凡なのである。
だからこそ、こんな優男の超絶イケメンが朝から愛しそうに視線を向ける意味が一切わからない。
幼馴染みってポイントを抜かせば、なのだが。
「何言ってるかわからない所が本当に可愛い」
にっこりと微笑み、新のボサボサ髪を指で優しく整える。
「ひいぃぃ!!えぐすぅぅ!!目が犯されるぅぅ…っ」
背後には観音様が見えるであろう程に後光がさし、イケメンスマイルで瞬殺だ。
「あー…、本当、俺だけのものに出来たら良いんだけどね。今すぐにでも犯したいよ」
「……ナニモキコエナイヨ」
ギギギって錆び付いた音がしそうな程に可梛から視線をはずし、首を反対側へ向ける。
「ははっ…、まだキスもしてない内から欲情しちゃダメだよね。ごめんね、新。まずは抱きしめてからキスがセオリーだったね。そんな奥ゆかしい所もまた可愛くて朝から勃起しちゃったよ」
ぎしりとベットの軋む音がしたと思えば、頬に柔らかな感触。
ちゅっとリップ音を聞かせて、触れるだけの口づけを落とした。
そして朝から不釣り合いな程の下品な言葉が聞こえたのは気のせいだろうか。
いや、気のせいであって欲しい。
(ぅおぉぉぉい!!!?こいつ、またしたぁぁぁ!!)
「顔、真っ赤…。あー…今すぐ犯したい」
ふわりと嬉しそうに可梛は微笑み、新を抱き寄せる。
2人の体温が触れあったと思えば、ゆっくりと可梛の顔が近づいていく。
「っ、ちょ…!?」
新が貞操の危機を感じ、抵抗する前にふにっと2人の唇が重なり合う。
新、完全に思考停止。
可梛は口角を上げて嬉しそうに頬を赤らめる。
(………ナニコレ)
「古郷!!今日も佐野の警備に行こう!!さぁ、立ち上がれ!!」
バタンと大きな音がしたと思えば、同室者の礼貴が大きな声で扉を破って来た。
「いやぁぁぁ!!?何ぃぃ??もう、何なのぉぉ!!?」
「…相変わらず、空気の読めない男だね」
「む!?何をしている!?古郷は御門に添い寝してもらわないと寝れないのか!?それは高校生としてどうかと思うが!」
「ノックもせずに無遠慮に毎朝毎朝入ってくる、てっしーの方がどうかと思うんだけどぉぉぉ…!!」
こうして古郷新の慌ただし1日が始まるのだった。
2026.05.25
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