tori


物語は進む


風紀室では、永久、千尋、真琴、玄心の四人が存在していた。
永久と真琴と玄心がソファーに座り、千尋がパソコンで記録をしている。

「では、今回の事件は親衛隊が勝手にした事で、織田くんと右京くんは何も知らなかった、と言う事ですか」

永久の言葉に、真琴と玄心が頷く。

「親衛隊の方々が真琴様を崇拝しているのは存じ上げておりますが、…結愛様との仲を応援していたのは初めて伺いました。私は今朝、真琴様に結愛様はとても大切な方だと伝えられたくらいでして……」

玄心は申し訳ないとばかりに眉を下げる。

「僕も親衛隊にはまだ結愛の事は話してなくて、もう少ししたら大切な人なんだと言おうと思ってんだ。ずっと隠してたのに、どこから嗅ぎつけたんだろ…。怖いな」
「真琴様、ご安心下さい。結愛様の事は私が命にかえてもお守り致します」

玄心は誰もが見惚れるような笑みをし、真琴を見つめた。

「ありがとう。必ず、僕の結愛を守ってよ」

言葉では強気だが、表情こそすぐれない。
真琴は何でこんな事になってしまったんだと頭を抱えた。

「そうですか…制裁は勝手に行われ、あなた方は無関係とわかったので、本日はもう結構です。わざわさ来てくれて、ありがとうございました」

永久はニコリと微笑むと、ドアの方へ手を促し、用事は済んだと言動で伝える。
それに対し、真琴と玄心はお辞儀をし、風紀室を出て行ったのだった。
二人の姿が見えなくなり、パソコンを打ち終えた千尋が小さな溜め息をつく。

「すみませんね、今、御子神くんが席を外してるので、急遽小林くんには慣れない記録をさせてしまいました」
「いえ、自分が不慣れなので申し訳ないです」

千尋は昔から書類や記録などの事務関係が苦手で、見回りや肉弾戦だけは得意なのだ。
だから、ほとりのように事務も肉弾戦も両方そつなくこなせなかった。

「明日には御子神くんが副委員長である事が公になりますが、それとは別に風紀の戦力になる方々を見つけました」

永久の言葉に、千尋が微かに驚く。
風紀の希望者はそれなりにいるものの、永久の眼力には叶わず断る日々がずっと続いていたと聞く。
だから今回も少ないメンバーで一年過ごすんだと思っていたら、そうでもないらしい。

「一人は一年F組の的井アキラくんです」

その言葉を聞き、千尋は椅子ごとひっくり返った。
そしてしばし固まる。

「意外でしたか?
でも彼は御子神くんと良い意味でも悪い意味でも対角線上にいるので、風紀に入れば互いに成長し合うと思うんです」
「え、委員長…本気ですか!?あの的井ですよ!万年風紀を乱し、未だに尻尾を掴めていないのに、あんな奴を風紀になんて…」

千尋は明らかに戸惑い、動揺していた。

「ええ、的井くんは確かに破天荒で救いようのない人間ですが、ダメな子ほど可愛いと言うじゃないですか」

それをハッキリ言っちゃうんですか、と千尋の副音声が聞こえた気がする。

「昨日、とりあえず僕の犬になりたいと凄い懐かれてしまってね。たまには違う犬種もありだろうと思ったんです。それに何か悪さをしようものなら、お仕置きしますし。調教に関しては自信ありますので、安心して下さい」

永久は誰もが見とれる笑みを浮かべた。
それに対して、千尋は乾いた笑いをしたのだ。
永久が言うなら、アキラは間違いなく服従を誓うだろう。
それでも今までの狂気ぶりを知っているから、素直に受け止められないでいた。

「そして記録係担当になるんですが、パソコンが学年一優れている事が編入テストで判明した生徒がいるんですよ」

永久の言葉に、編入と言う事は外部生か、と千尋は思う。
自分が知る限りでは結愛の顔しか思い浮かばないが、外部生は他にも何人もいるのだ。
お世辞ではないが、平凡な結愛にそんな特技がある訳ないと最初から除外していた。
それに風紀をやるには肉弾戦が圧倒的不利なのだ。

「ふふ、多分その除外した人物で間違いありませんよ」
「え、本郷ですか!?」

千尋の声が風紀室に響き渡る。
聞き間違いかと、何度も名前を伝えると、永久は何度もそうですよ、と答えた。

「僕もまさか彼がそんな特技あるとは思わず驚いてます。技術的に考えると学生の域を越してると思いますよ。編入試験を全て高速でクリアしてますし、学力は平均なのでなかなか気づきにくいかもしれませんが、ブラインドタッチに教師たちが見とれる程だと聞いてますね」
「それで本郷を風紀に?」

千尋は驚きつつも口元が綻んでおり、結愛と一緒に過ごせる事を期待していた。
その姿を見て、永久がくすりと笑う。

「本郷くんが生徒会や新聞部に取られる前に、早速アプローチを開始しましょう。彼には見回りとかではなく、風紀室で待機してもらい、記録や書類関係中心にしてもらいますので、小林くんも先輩として色々教えてあげて下さいね」


本人の知らない所で、物語が動いてしまうのも一つの運命。


2024.08.28

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