tori


ハイエナ


遡る事、数時間前。
とある会議室で議題が上がり、問題視されていた。

「我々、生徒会会長親衛隊は今回の事をいかにしても許しがたいと感じ、桜花様に無礼を働いた転校生、阿曽沼恭介に制裁を加えます!」

ダーン、と効果音が鳴るような凛々しさで、親衛隊隊長の種倉たねくらマイキはテーブルを両手で叩くように立ち上がった。
それに続くよう、何人もの親衛隊達が歓声し、拍手喝采する。

「まずは警告から始めます。懲りなければ制裁、それでも収まらないようならば強姦しましょう!」

隊長の口から初めて出た強姦の文字に、全員がざわめき出す。

「桜花様はこの学園の風習を酷く嫌います。そんな彼に対して、拷問とも言える言動の数々、許せません!」

戸惑いはあるものの、皆、咲雨を慕っているのだ。
仕事が出来、容姿端麗、頭脳明晰、そして会長に相応しい凛々しい立ち振舞い、それら全てに心酔してる。
だからこそ大切な会長の為、悪魔に魂を売る勢いで身を削るのだった。
その中に一人、異物な存在が紛れている事に誰一人として気づきはしない。

「ホンマ強姦とか、わかって使っとるんやろか?この子ら、普段からぽーっとしてますよってからに、絶対わかっとらん違うか…」

美樹が親衛隊の中に入り、事の一部始終を見聞きしていた。
いつものマッシュルームヘアーではなく、茶髪ボブヘアーのカツラを被り、銀フレームの眼鏡をかけて。
その場で解散を命じられ、蜘蛛の巣を散らすようにそれぞれが出て行った。
今の会話をボイスレコーダーに録音し、ある人物に渡す為にニヤリと不気味な笑みを浮かべる。
人の気配がなくなった事を良いように、スマホを取り出して電話をかけた。
その間に盗聴器や監視カメラがないか機械で確認しながら。

「はいはいは〜い、俺やで」

美樹は相手が電話に出た事で、テンションを上げて声を出した。

『オレオレ詐欺は間に合ってます。二度とかけてこないで下さい』

そう言って、永久は電話を速攻で切ったのだ。

「あんれま〜、犬神くん、偉い不機嫌やん。どないしたんやろ」

そう言って、再び電話をかけ直した。

『今、本郷くんと会長の暴力事件の目撃証言を聞きに行く所なんです。くだらない内容だったら、速攻で落としますよ?』

声は穏やかで、顔もきっと優しく微笑んでいるだろう。
だが、電話口からでもわかる殺気に美樹じゃなければ平然としてられなかった筈だ。
ビシビシと伝わってくるそれを意ともしないのは慣れているから。

「何や何や〜、くだらない内容なんかじゃあらへんでっ。ハイエナとしての仕事や、ちゃんと聞いてや〜」

美樹の口から、ハイエナの名前が出る。
その時は情報屋としての取引を意味していた。
美作美樹、表向きには新聞部部長。
だが裏の顔は誰もが恐れるハイエナと言う、骨の髄までしゃぶる肉食動物のような存在で有名な情報屋だ。
彼に睨まれたら、たちまちプライベートや個人情報、全てが通抜けとなり、敵対する輩に売り付けられ終了する。
だからこそ、彼の機嫌を損ねないよう周囲は腫れ物に触るかのような対応になっていた。
そんな美樹を顎で使うのが、四神のトップとして君臨するリーダー、永久なのである。
お互いに需要と供給、仕事のパートナーとしてタッグを組んでいた。
美樹はそれなりに喧嘩にも強く、自分の身は自分で守れるが、それはあくまでそれなりの相手に対して。
四神やblack emperor、それを狙う族に対しては全く太刀打ち出来ない。
だから情報を安く売って、裏切らないと約束した上で、美樹の身の安全を守るのも四神の仕事なのだった。

「会長の親衛隊が転校生くんに制裁するらしいで。ミーティングで話とった」
『ご協力感謝します』
「教室でのチューが原因らしいねん。こりゃ、また学園が荒れるで」

先程の口調とは変わり、ハイエナ時の言い方になっていたのだ。

「ほんでな、どうやら皇帝がまたこの学園に潜りよってからに。何か探してるさかい、気をつけたってや。この学園内に入れるよう、ハッキングされた形跡あんねん。こんな事出来るんは、右腕くんだけやで」
『あの男達が、…ですか。わかりました、貴重な情報をありがとうございます』

そう言って、電話は切れた。
その数分後に、結愛が皇帝に見初められるなど思いもせずに。


ハイエナはどこにでも神出鬼没。


2024.11.23

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