自覚した瞬間、それはストンと落ちる
「あ〜、えっとアンタは…誰だ?」
恭介が目を覚まして、第一声の言葉がこれだった。
別に記憶喪失でも何でもなく、本当に目の前の人物に見覚えがなかったのである。
「風紀の小林だ」
そう千尋が答えると、恭介が納得したように両手をポンっと合わせた。
「そうか、風紀か〜…、って風紀が何でいんの?」
只今、恭介は保健室のベッドの上にいる。
「今日の会長との暴力事件と、騒動についてだ」
「それか〜、まぁ、好みな奴がいたら襲いたくなるっつうの?会長さん、顔がドストライクなんだわ」
その言葉に、千尋が溜め息を吐いた。
「だからと言って、教室での殴り合いをするのか?普通はしないだろ」
「まぁまぁ、良いじゃねぇか。別に怪我人出た訳じゃねぇんだし」
自分は怪我をして、気絶していた事すらノーカウントらしい。
恭介と千尋の性格が全くの正反対な為、あぁ言えばこう言うの繰り返しだった。
「しばらく阿曽沼の警護に付きたい所だが、生憎と誰も手が空いてないんだ。すまないが、何か起こりそう、または起きた時に連絡してくれないか?」
そう言って、千尋の電話番号を渡した。
「ん?俺、別に警護される程弱くないぜ?それに負ける自信もねぇし」
「……、いや…、そうではなくてだな」
千尋が言いづらそうにしており、恭介が首を傾げた。
「何だよ、ハッキリ言えよ。日本人は自分の意思を伝えないからダメなんだよ。イエス、ノー、しっかりしろっての」
その言葉に千尋はカチンと来た。
こちらが気遣ってやれば、この言いぐさだ。
結愛とは偉い違いだなと、嫌悪感すら沸いた。
「制裁と言っても何も暴力だけじゃない。強姦、複数人によるものなど多発しているんだ。俺たちはそれを心配してると言うのに」
千尋はハァと小さな溜め息を再び吐いた。
「その心配はいらねぇぜ?俺、来るもの拒まずだし、美味しく頂かせてもらうからさ」
挑発的な目で、千尋を見上げた。
何て勝ち気な顔をするんだと、内心思う。
「その、阿曽沼は初めてじゃないのか…?」
恐る恐る千尋が問いかければ、恭介は厭らしい笑みを浮かべた。
「まぁ、そうだな?ネコもタチもそれなりにこなしたけど、やっぱ合ってるのはタチだろうな〜」
色気漂う雰囲気が室内に充満する。
何かを企んでる目だろう。
自然と千尋が距離を取るように後ずさった。
「小林は童貞って感じだな。まだなんだろ?なぁ、相手に困ったら、面倒見てやっても良いぜ?俺、節操ないから誰でも大丈夫だし」
そう言って、自分のワイシャツのボタンをプチプチと外し、わざと自ら胸の飾りを見せる。
それを千尋は不快感露にして、恭介を睨み付けた。
「その手の冗談は嫌いだ、二度と言わないでくれ」
そう言って、怒って廊下へ出てしまった。
「あ〜あ…、怒らせちまったぜ」
恭介は保健室に一人になると、これだから生真面目な童貞野郎は好きになれねぇんだよ、と呟いたのだった。
「制裁ねぇ…?スゲェ、ゴリゴリの奴とか来そう。会長さんは格好良いから、ネコ多そうだもんな〜、だから強姦するならムキムキのを寄越すんだろうけど。まぁ、みんな可愛子ちゃんを抱けないくらい、俺が可愛がってネコにしてやるとするか」
そう言って、面白そうに肩を揺らして笑ったのだった。
「好み、変わったのかな。会長、良かったけど、今朝の結愛程じゃなかったわ…」
フウっと小さな息をつき、参ったな、と自らの頭をかいた。
あれだけ、やりたい放題したのに、実は心がそこまで踊っていなかった恭介。
それは転校初日の門で、結愛と出会い、運命的なシチュエーションでときめいたからなのだ。
会長さんより気になるとか、重症だろ。
2027.12.13
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