策士の戦略
役員専用のエレベーターで降りて来た結愛に、一般生徒達はざわついた。
何で風紀平である彼が、平凡が、そんな声がまことしやかに囁かれていたのだ。
何の事かわからず、結愛が首を傾げれば、その背後より永久が現れる。
同じエレベーター内にいた事を示し、それが更に追い打ちをかけるように騒々しくなっていく。
永久はニコリと微笑み、結愛を背後から抱き締める。
そして、誰も見た事がないくらい優しく愛しい者へしか向けない顔で結愛のお腹を撫でたのだ。
「本郷くん、ここは大丈夫ですか?僕がたくさん可愛がったから、掻き出す時に鳴かせてしまいましたね」
そう言って、まるで永久のものを挿入し、中出しをしたかのような言葉を吐いたのである。
それを聞いていた複数の生徒達から、どよめきの声が上がった。
「え、掻き出す…?何をですか?」
結愛は意味が全くわからないと、再び首を傾げる。
そして永久からのスキンシップに照れる所か、当然とばかりに受け入れている姿はもっと異様な光景だった。
照れたり、焦ったりすればまだ許容範囲だったろう。
なのに当然のように永久からのスキンシップや発言を受け止めているのは、2人にとってこれが日常的なものであると言っているも同然なのだ。
これにはたまたま出くわした周囲の生徒達が誤解するのに申し分なかった。
「ふふっ、ここでそれを言わせますか?今朝、たくさんベッドでシたじゃないですか」
そう色っぽく囁いた言葉に、周りの生徒達が次々と悲鳴を上げていったのだ。
もうそれは誤解や疑心暗鬼などではなく、決定的なものとなり、中にはショックのあまり倒れる者や泣き出す者までいる始末。
「っ!?あれは委員長が何度もするからっ…!」
結愛が顔を真っ赤にし、明らかに狼狽える。
それがどれだけ真実味を高めるか、そしてこのやり取りだけで二人には体の関係がある事が理解出来たのである。
更に明け方までセックスをしていたであろう事、結愛が永久の居室に泊まった事を周知させるには充分な威力なのだった。
「すみません、あまりにも君が可愛くて止まらなくなりました。僕もまだまだですね」
結愛を壁際へ押しやり、向かい合わせにすれば、誰もが羨む壁ドン。
永久は結愛の腰に腕を回し、壁に腕をついて至近距離で見つめた。
「僕以外を見ないで下さいね。嫉妬で狂いそうになってしまいます」
そう言って、触れるだけのキスをしたのだった。
それには周りのギャラリー達から悲痛な悲鳴と、黄色い悲鳴が飛び交う。
物凄い騒ぎの中、結愛は永久の胸元に手を置き、ワイシャツを掴んでキスに応えたのだった。
「シャッターチャンスやでっ!ホンマかいなっ!!朝からこないご褒美貰えるなん、幸せ以外の何ものでもないっちゅーねん!!」
突然のフラッシュの連続で、周囲の生徒達が目を瞑った。
だが底抜けて明るい声と、関西弁独特の喋り方で顔を見なくてもそこに誰がいるのか瞬時に察知したのだ。
「ごっっっつテンション上がるでっ!犬神くんと平凡くんがそないな関係だったなん、美味し過ぎやろぉっ!!!」
物凄い早さで二人の周囲を動き回り、シャッター音を鳴らして写真を撮りまくる。
「ビッグニュースやでっ!自分らいつからなん?二人は付き合うてるん?アメちゃんあげるから、新聞部で詳しい話聞かせてや〜!」
美樹の質問攻めとクセの強さにギャラリー達がドン引きしていた。
永久達の関係を知りたいが、この変態の傍に一秒たりとも居合わせたくない。
生理的に受け付けるないのだ。
しかも高校生になって、アメに釣られる人間はいないだろうよ、と心の中で居合わせた人達がほぼ同時に思った。
遠巻きに後ずさっていく面々に、永久は内心ほくそ笑む。
まるでこうなる事を予期していたように。
「偉いご馳走やでっ!どないすんの、自分をこんなに高ぶらせよってからに!」
美樹が結愛をマジマジと見つめ、鼻息荒くして近寄る。
「平凡くん、そないエッチな顔したらアカンよっ!自分、見る専なのにグラッと来てまうやないの!頼むから、誘惑せんといて〜」
美樹はそう言いながらも、結愛に触ろうと手を伸ばした。
その手を永久が素早く払い除ける。
「美作先輩、いけませんよ。僕の大切な恋人なんですから、そんな下心満載の顔で触らないで下さいね」
永久の言葉に、美樹がまたも興奮するのだった。
「風紀委員長×平凡!!!く〜、堪らんでっ!どないやねん、ホンマ!最高やないかっ!!!」
美樹の叫び声がフロア全体に響き渡ったのだった。
(ついにホンマもんの平凡受け、リアルに来よったでぇぇぇぇ!!!!付き合うてるとか、最高やでっ!!)
2025.01.25
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