tori


対決


※主人公の余計なお世話的なものが発動します。トントン拍子に進むので、悪しからず。


結愛が久々に教室へ向かうと、何故か人だかりが出来ているではないか。
中へ入り、自らの席に着いた。

「夜蔵、おはよう」

既に隣の席には篠の姿があった。

「っ!!!!本郷、おはよう!」

篠にしては珍しく声を張っており、驚いた表情をしていた。

「…どうかしたのか?」

結愛は不思議に思い、声をかける。
すると篠は嬉しそうに微笑んだのだった。

「いや、本郷に会うのが久々だから、その…とても嬉しくてな…」

まるで大和撫子のような美しい笑みに、自然と結愛の心が癒される。

「俺も久々に夜蔵と会えて嬉しい」

二人は頬を染めながら、微笑み合ったのだ。
その反対側では大騒動が起きていた。

「何かあったのか?」
「何か転校生の机に菊の花と花瓶が置かれてるんだ。多分、昨日の会長との騒動でだろう」

次々とクラスメイト達が話し始める。
その言葉に、結愛は咲雨と恭介のキスシーンを思い出した。

「……あ〜、あれか…」

さすがの結愛もあれは不味かったんじゃないかと、苦笑いしたのだ。

「会長の所は親衛隊の数が学園一だからな、制裁は確実だろうな」

遠巻きに二人は見て、ざわつくクラスメイト達の言葉に耳を傾けていた。

「制裁か…、さすがにそれは見過ごせないよな」

結愛は立ち上がり、人だかりを押し退けるようにその輪の中へと入って行った。
篠は慌てて止めようとするも、時既に遅し。

「風紀として制裁は許せるものじゃない。そして人間としても嫌がらせや、誰かを苛める真似を見過ごせないよな」

そう独り言のように言って、花瓶を片付け始めた。

「こんな嫌がらせの為に、この菊は生まれた訳じゃない。どんな物にも命が宿ってるんだ。もし、これを用意していた人間がいるなら、止めて欲しい。出来なかったら、俺や風紀の人間なら誰でもいいから報告してくれないか?…こんな事をして、一番悲しむのは会長本人なんだって事を理解して欲しい…」

その言葉に、騒々しかった室内は一気に形を変え、静かになった。

「そして何より俺の目の前で、誰かが傷付くのを見たくない。もし辛くって話を聞いて欲しいなら、いくらでも聞くから、間違った方向にだけはいかないでくれ。文句でも愚痴でも何でもいいんだ…ひとりで抱えないでくれ」

結愛はわかっていた。
この実行犯が近くで必ず見ている事を。
菊の花を置いた反応を見る為に、犯人自ら足を運ぶのは心理的なものだ。
わかっているからこそ、伝えたかった。
受け入れられるなんて思わない。
だけど、一人でもいいから考え直してくれたなら、きっと未来は変わる。

「それに阿曽沼なら、もうその罪を償っているだろ?今は懺悔室で謹慎中だ」

その言葉を聞いていたマイキが勢い良く飛び出して来た。

「勝手な事を言わないでくれるかな?君に何がわかるって言うのさ。会長様が転校生のせいでどんな思いをし、どれだけ傷付いたかなんてわかる訳ない!僕は隊長だ。会長をお守りするのが役目なんだよ」

咲雨の所の隊長が現れ、その場は騒然とした。

「隊長だからだろ、隊長だから会長の気持ちを汲み取らなきゃならないのに、…何であんたはこんな卑怯な真似が出来るんだ。親衛隊だからと、会長の為だからと言っているけど、そうじゃないだろ。自分よがりになってないか?」

結愛はマイキの前に立ち、じっと瞳を見つめた。

「転校生が僕達の会長にあんな真似をしたからじゃないか。暴力、そしてキスなんて…、そんなのあの方にしてはならない」

マイキは結愛を睨み付けるように見据えた。

「それは確かに普通じゃなかっただろうよ。だからって、何であんたが自らの手を汚すんだ…?今は気づかないかもしれないけど、いつか自分のした事を悔やむ時が来るんだ。間違った正義は必ず己に返ってくる。辛くなるのは周りでも会長でもないんだ。こんな事をしても心は晴れないよ。あんたが傷つくだけなんだよ」

そう言って、結愛はマイキの頭を優しく撫でる。
まるで子供が悪さをした時に叱るのではなく、優しく包み込むように。

「なっ…!?」

マイキが驚きに後ずさる。
予想だにしてなかったのか、先程までのポーカーフェイスが崩れていた。
そして触られた髪を自らの手で触り、確かめるように撫でる。

「今まで一生懸命、会長の為にしてきたんだろ?その努力をこんな事で台無しにして、どうするんだ?会長は本当に凄い人だ…俺も尊敬してる。そんな会長が隊長のあんたを認めてるのに、何してんだよ?あんたがするのはそんなんじゃないだろ?今やもう、制裁しようとする輩を止めなきゃいけない立場なんだよ」

結愛の言葉に、マイキが何かに気づいたように驚愕な表情をうかべた。

「……本郷、俺の伝えたい言葉を言ってくれて、ありがとう」

ここにいる筈のない咲雨が結愛に頭を下げてお礼をしていた。
いつからそこにいたのだろう。
どうしてここにいるのだろう。
皆その思いに言葉が出なかった。

「種倉、…お前は本当に良くやってくれてる。でもな、俺はこんな制裁などする種倉を許せないし、そんな風にさせた俺自身も許せない。…こうなってしまったのは、全部俺のせいだ」

凛とした声だが、その顔はとても辛そうに歪んでいた。

「親衛隊を解散してくれないか?……俺なんかについて来るべきではなかったんだ…」


2025.01.27

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