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綺羅の手にキスをしてるユーリに向かい、ホースで水をかけた。
ピンポイントでユーリのセットされた髪型だけに当たるように水が滴り落ちる。
その瞬間に、綺羅が何事かと辺りを見回せば、背後に同居人の男が立っていたのだった。
「そこのデカブツ、綺羅から手を離せ」
蛇口の水を閉め、ホースを地面に置けば、綺羅を背後から抱き締めるように筋肉のついた腕をお腹へと回した。
「っ、悠斗…!?」
綺羅はお客さんでもあるユーリに何て事をと慌てて駆け寄ろうとするも、それを同居人の男がさせてくれない。
腕に力を入れ、まるでバックハグをするように両腕を回されたからだ。
「…、クレイジーボーイ、よくもキティとの時間を邪魔してくれたね」
ユーリは眉間に皺を寄せ、纏まってた前髪が水により額に張り付き、それを手でかき上げた。
その仕草だけでもハリウッド俳優のように爽やかで紳士的である。
「ボーイって程の歳じゃねぇよ、お前より年上だからな」
フンっと鼻を鳴らして、上から嘲笑うように口角を上げて綺羅をぎゅっと抱き締める。
「ちょっと、悠斗っ!
クラヴィスさんが風邪でも引いたら、どうするのさっ」
綺羅が珍しく目くじらを立てて怒りを露にする。
毎日高価な花を購入してくれる上客なので、逃がす訳にはいかないとプンプンしているではないか。
だが安心して欲しい。
ユーリは綺羅に会う為だけに、毎日この花屋の常連になっているのたから、水をかけられようが火炙りにされようが、揺るぎない愛は変わらないのだ。
「ん、大丈夫だって」
そう言って同居人こと、久世悠斗は綺羅の無防備な首筋にキスをした。
言っておくが、この二人は幼馴染みであり、元恋人同士であったが、色々あって今は再び幼馴染みへと戻っているのである。
それでも綺羅への愛は変わらず、今でも溺愛しているのだった。
むしろ愛が重すぎて、束縛が強いと言っても過言ではないのだが。
「…っ、あっ!」
何度もリップ音を鳴らし、項から首筋にかけて口付けを落とす。
その柔らかな感触と擽ったさに、綺羅はとんでもない声を出してしまった。
「っ、キティ…っ!」
「綺羅っ…」
二人の男が同時に顔を赤らめ、綺羅の恥ずかしそうに唇を手で隠す姿を凝視する。
その仕草がどれだけ男を虜にするか、綺羅は知らない。
「もっ、やぁ…!
悠斗のバカっ」
20歳の男が顔を真っ赤にして、上目遣いでバカ、なんて可愛く言うものなのか、とユーリと悠斗は胸をキュンキュンさせて高鳴らせた。
「ナイスだ、クレイジーボーイ」
ユーリが鼻血を出しながら親指を立てれば、悠斗はドヤ顔で同じように親指を立てて返したのだった。
「もう、二度と来るな」
「キティ、また後で来るよ」
悠斗の言葉を完全にスルーして、綺羅にウインクする。
「あ、はい、それまでにいつもの花束を用意しておきますね」
「おい、警察につき出すぞ」
悠斗が何か言っているが、ユーリの耳には綺羅の声しか届かない。
「もう、悠斗ってば…。クラヴィスさんは警察官なんだから、何の冗談言ってるの?」
綺羅が困った顔で振り返る。
身長差が20センチある為、自然と綺羅は上目遣いになるのだが、それがまた悠斗からしたら可愛くて仕方ないのだった。
「ん、ああ。あんまアイツに近寄るなよ、綺羅なんかパクンと美味しく頂かれちゃうぜ」
そう言って食べる真似をして、綺羅の首筋に噛みついたのである。
「ひっ…!?」
ビクリと綺羅は肩を揺らして、逃げようとするも悠斗によって敵わない。
「クレイジーボーイっ、僕のキティに何て事を!!」
ユーリが青筋を立てて激怒し、綺羅を自分の胸元へと抱き締めた。
「っ、クラヴィスさん…」
半べそをかきながら、うるうるした瞳で綺羅は見上げる。
その可愛らしさと言ったら半端なく、ユーリはクラリと目眩を起こしたのだった。
「っ…、キティ、君は僕の天使だ」
そう言って、結愛の顎を掴んでユーリは屈んだ。
そして無防備な唇にキスをしたのだった。
「ふぅ、んあ…!?」
綺羅は目を大きく開け、呆然と固まる。
それを悠斗も驚愕の表情を浮かべ、同様に固まったのだった。
「ご馳走さま」
ユーリはリップ音を鳴らし、綺羅から離れる。
そして蕩けんばかりの優しい笑みを浮かべて、愛を囁いたのだった。
(キティ…、今すぐ君を拐いたいよ。)
2024.07.29
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