tori


5※R15


※ぬるいR15、性的表現あり。
苦手な方はスルーして下さい。
ーーー


綺羅が家を一歩出れば、いつもは賑わうチャイナタウンも静寂に包まれていた。
もう秋だからか、風が冷たく、ブルッと冷たい空気に体を震わせる。
何の気配もしなかったのに、ぬっと現れる影にビクリと肩が大きく跳ねた。

「綺羅…」

名前を呼ばれ、それが何者かわかると安心したように目の前の男を見上げた。

「フェイ…、迎えに来てくれたんだね」

嬉しそうに微笑み、全身黒ずくめの長身の男に抱き付いた。

「ああ、ここは物騒な街だからな」

無愛想な表情をする男こそ、フェイロン・ウォン、綺羅の唯一の上客であり、今は亡き愛しい斗真に瓜二つの殺し屋だ。
綺羅の腰をグッと抱き寄せ、すぐそばに停車してある黒い車に乗せる。

「仕事、忙しいんじゃないの?
いつも僕のお店の定休日にしてくれてるけど、目の下のクマが一段と凄いよ…」

綺羅は運転するフェイロンを助手席から心配そうに見つめる。
その視線に気づき、車を路肩に止めれば、フッと優しく微笑んだ。
滅多に見れないフェイロンの笑みに、まるで斗真と一緒にいるような感覚に陥る。
綺羅の胸がキュンと高鳴り、頬を赤らめて視線を逸らした。
その動きをずっとフェイロンは見つめ、大きくゴツゴツとした手が綺羅の後頭部に添えられる。

「綺羅」

名前を呼ばれ、おずおずとフェイロンに視線を戻せば、ギラギラした熱い瞳と交わる。
この目を知っている。
いつも綺羅を抱く時に見せる、獣のような欲情した目だ。

「フェイ…、車の中…」

外である事を伝えるも、フェイロンの熱い眼差しは本能を剥き出しに、ギラリと光る。

「一週間だ。
お前を一週間も抱いてない…、今すぐ欲しい」

フェイロンがゆっくり近づいて来て、綺羅の顎をくいっと指で上を向かせる。
目の前の整った顔に心臓がバクバク音を立てた。

「っ、ダメ…、こんな所じゃ…」

拒絶の言葉を口にしてるが、本当は強引に奪ってもらう事をどこかで期待していた。

「っ、フェイ…」

綺羅は目を潤ませ、フェイロンを見つめた。
好き、大好き、斗真とそっくりな所も、斗真がしない冷たい表情も、このギラギラした瞳も全部、好きだと心が、体が彼を求めている。

「本当に…ダメ…っ」

フェイロンは綺羅の唇が触れるか触れないかの距離で止まる。
そして全てを見透すような茶色い瞳に吸い込まれそうになった。

「本当に、止めて良いのか…?」

酷く色気の混じった低い声に、綺羅の体が小さく震える。
止めないで、このまま全てを奪って、と心の中で呟いた。

「……っ、ここじゃダメ…、でもキスだけ、…いつもみたいに、気持ち良くなるキス、して…っ」

綺羅は顔を真っ赤にして、可愛らしくねだる。
その姿にフェイロンの胸がドクンと大きく高鳴った。

「わかった、今はそれで…我慢してやる」

フェイロンの目が雄そのものになり、綺羅の顎を優しく撫でた。

「ん、フェイ…んっ…、んっ!」

フェイロンの唇が触れたと思えば、貪るように舌が口腔に侵入して来た。

「んっ、ふぁ…」

全てを食らい尽くすような激しい口付けに、綺羅は心臓をバクバクさせながら、必死で呼吸をする為に口を開く。
それが更にフェイロンの舌を口腔へと招き入れ、二人の距離がゼロとなり、水音が車内に大きく響き渡った。

「ふぇ、いっ…、んっ、好きっ…」

キスの合間に綺羅が呟けば、フェイロンの目がうっすらと開く。
そして我慢出来ないとばかりに、座席のシートを倒し、綺羅の上にまたがった。

「っ…、綺羅…」

フェイロンが綺羅を潰さないように上から体重をかけて、力強く抱き締める。

「はっ、…フェイ…」

二人は熱の籠った瞳を合わせ、何度も口付けを繰り返す。
外は明るくなり、通勤の時間を知らせるように人々が街へ出て来た。
車がギッギッと不全なまでに揺れているが、気にする者は誰一人としていない。
車内では綺羅がフェイロンにより何度も激しく腰を突かれ、甘い喘ぎ声をひっきりなしに洩らしていた。
何度貪っても、抱いても飽きやしない目の前の青年に、フェイロンは夢中になっていたのである。
この体を知ったら、他で満足など出来ない。
掴まったのは街で一番恐れられる殺し屋、掴まえたのは平凡で何の特技もない花屋の店主、裏の顔は男娼。
綺羅が愛しくて仕方がないのだ。
例え一夜を金で買っていたとしても。

この世に二人だけになれたら、どんなに幸せだろうか。
殺し屋としてではなく普通に生きて、この平凡な青年に出会えたら、どれだけ良かっただろうか。
だが、現実は残酷である。


2024.08.01

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