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どのくらい走ったのだろうか。
緑しか見えなかった景色から一変、現実離れした神秘的な世界が広がったのだった。
大きな噴水から流れる水は、太陽の光を浴び、キラキラと輝いている。
その近くには大理石で作られた屋根と、何人も座れそうな程の長さの椅子。
中央に一人、仰向けで横たわっている人物がいるではないか。
程よく筋肉のついた体に、健康的な肌をし、制服の裾はロールアップしており、そこから覗く足はスポーツでもしているのではと思う程に、筋が出ており、絵になっていた。
顔にかけられたハンカチが風になびく。
その瞬間、格好良く整った顔と、黒髪に赤と白のメッシュの入った奇抜な髪の毛が見えた。
「はいはい、今戻るぜ」
柳を誰かと間違えているのだろう。
青年は観念したとばかりに目を開けた。
「……お前、誰?」
人違いだとわかれば、急に声が低くなり、警戒心強く睨まれた。
さながら、蛇に睨まれたカエル状態である。
(いや、それ、俺のセリフ)
ゆっくりと起き上がり、再度、柳の顔を見れば、先程までの威圧感が一気に消えた。
それだけで、ほっと息がつけるような気がするのは気の所為だろうか。
「うーん…確か、こたいだ事故にあった外部生だったか?今日は犬っころの所に呼ばれてんじゃなかったのか?」
青年は不思議そうに呟き、ポケットからスマホを出す。
そして、スクロールして、誰かに電話をかけたのだった。
柳が答える間もなく、進められる会話。
「あ、俺。ん?オレオレ詐欺じゃねぇよ。お前の大切なミカちゃんだわ。あのさ、奥さん、ちょっと副に代わってくんない?」
柳に向けて、ポンポンと隣に座るよう椅子を手で叩く。
「あ、俺、変な人じゃねぇから。こう見えて、生徒会会長の皇崎帝。こんな時間に講堂に来たって事は、迷子なんだろ?」
柳はコクリと頷き、素直に帝の横に座った。
ミカちゃんこと、可愛らしい名前の青年こそ、この学園のトップ、生徒会会長の皇崎帝である。
会長にしては制服は着崩してあり、ブレザーすら着てない。
更にはネックレスや指輪などの装飾品をジャラジャラつけており、ピアスなんて片側だけで3つも開けているではないか。
こんなんで生徒会は大丈夫なのだろうか、と不安に思ったのは言うまでもない。
2024.07.08
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