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風紀室では永久を筆頭にメンバーが集まっていた。
委員長の永久、副委員長のほとり、平委員の千尋、そしてその傍らにいるもう1つの影。
「悪ぃな、夜蔵」
永久がそう応えると、青年が何の感情も籠もっていない表情と声で応える。
「いいえ、仕事ですから。それにもう風邪は回復しました」
夜蔵篠、もう1人の風紀副委員長だ。
銀フレームの眼鏡に血の通っていないんじゃないかと思わせる青白い肌、何の光も宿さない漆黒色の瞳は吸血鬼やアンドロイドを思わせる風貌である。
綺麗に整えられた黒髪と制服、一切隙のない出で立ち、張り詰めるような空気、その全てが彼を物語っていた。
「緊急事態になった。外部生、小鳥遊柳は強姦未遂にあい、自ら自殺未遂を起こした」
その言葉に千尋がいち早く反応し、永久を驚愕の表情で見た。
一方、篠は何の感情も籠もってない瞳をし、身動きひとつとらない。
「犯人はまだ捕まってねぇ、更には顔も特定されねぇ始末だ…。この風紀がだ、そんな事件すら知らず、のうのうと強姦魔達を野放しにしてやがった。てめぇら、その意味わかってんだろぉな…?あ?」
永久は1人1人の顔を見て、不愉快とばかりに顔を歪める。
「御子神…お前、外部生の護衛はずれろ」
その言葉にほとりの目が一瞬大きく見開く。
「夜蔵…、今日から外部生の護衛だ」
篠は表情変えないまま、返事をする。
それをほとりが視界に入れないよう、強く拳を握り締めた。
ギリっと静かな室内に音が響き、千尋だけが未だに理解出来ていなかったのだ。
「それと外部生には親衛隊がついてる。隊長の織田、副隊長の右京。あいつらは脅威だ…俺の誘いを断り、風紀入りしなかった変態ども。…くれぐれも気をつけろよ?挑発に乗んなよ?あ?」
鋭く今にも人を殺しそうな眼光でほとりだけを見て、永久は語る。
全部お見通しなのだ。
ほとりと玄心が仲悪いのも、玄心の挑発をうまく流せないのも。
その点、篠は何の感情も抱かない。
人として必要な痛覚、味覚、嗅覚が著しく欠落しているのが関係しているかは定かではないが、感情を面に出した事がなかった。
アンドロイドのような的確な思考を兼ね備え、常に何が優先かを選択出来る人間。
良く言えば、だが。
悪く言えば人としての感情が乏しいのだ。
「御子神、小林、お前らはあれを何がなんでも捕まえろ。織田を監視すれば見つかるだろう、あいつは神出鬼没だからなぁ…」
ほとりは明らかに嫌な顔をし、千尋は信じられないと口をあんぐりさせたのだった。
「小林…お前は何でも突っ走る方向にある、外部生に何があったのか知りたいなら大人しく俺について来い」
その言葉に姿勢を正し、大きな声で返事をした。
するとその振動により、壁が揺れ、辺りがビリビリとした空気をまとう。
予め予期していた篠は自らの耳を両手で塞ぎ、ほとりは耳が痛いとそこをさすった。
2024.08.07
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