死んでしまうとは情けない 「王」 「なんだ」 「3日で進み過ぎじゃないですか」 もうラスボスじゃん。とテレビ画面を見る。RPGのゲームって結構時間がかかるイメージなんだけどな。そういえばここ3日ずっとゲームやってる姿しか見ていない。寝ずにやってたのかな。死にそうになっているラスボスを見ながら考えていたら、目の前の金糸が揺れた。 「王たる者、この程度の敵に手間取っていては国がいくつあっても足りぬわ」 「なるほど」 さっぱり分からん。さっぱり分からん理屈だし敵よりもアンタの傍若無人さの方がいくつ国があっても足りないと思う。言ったら怒られるから言わないけど。そもそも王たる者がこんな庶民向けのテレビゲームなんてやってていいのか。ソファに腰かけてかちゃかちゃと絶え間なくコントローラーを動かす王を見る。先ほどから綺麗な黄金の髪がゆらゆら揺れている。少し視線をずらすとゆったりとした部屋着から王の首筋と鎖骨が見えた。その辺の女より綺麗な素肌だ。 「王」 「なんだ」 コントローラーを操作する王の手が止まった。どうやらラスボスを倒し終わったらしい。ちらりとテレビ画面を見ると死ぬ間際に何かラスボスがべらべらとしゃべっている。ゲームのキャラとはいえ話の長いやつは好きじゃない。散り際ぐらい潔くしたらどうだ。強く手を掴まれた。王が俺の手を掴んでいた。 「我に話しかけて余所見とは随分と不敬なことよな、雑種」 「すみません」 素直に謝ると王の瞳が不機嫌そうに細められた。真っ赤なルージュよりも濃く深い赤い瞳に吸い込まれそうになる。 「王」 「なんだ」 「かまってください」 ゲームのエンディングが流れ始めた。 2017.07.20 拍手 |