陰陽師さ・ま?
普段着ている黒色に業火の模様が特徴的な着物から着替える。
黒に黄色を付け足し、赤で締める。
鎧を着込み、戦の祝典に相応しい雄々しい姿で、戦場へと駆け出して行った。
戦う魂の象徴と呼べる衣装の彼は、とても凛々しく美しい。
だけど、性格までは変わることなく好戦的な表情が浮き出る。
そんな所も含めて黒無常らしいと言えば、正にその通りなのだけども。
茨木童子に引けを取らない威圧を放ち、前線に立って押し進む。
豪快な立ち回りに味方も信頼しているのだろう。
死神の鎌を思うままに振れば、あっという間に制圧していく。
敵の本陣が衝撃に耐えきれず、崩れてしまえば勝利を告げられる。
試合の様子を千里術により投影されたものを通して、全て見届けた。

「─!! みこ!! みこ!!! みこ!!!!!! みこッッッ!!!!!!」
「ひあぁっっ!?」
「みこ!ずっと見てたんだろ?どうだ?今回の俺も良かっただろっ?」

試合が終わった興奮そのままに、走り抱きついてきた黒無常に勢い負けしてしまう。
ぎゅーっと抱きしめ軽く回った後、私に感想を求める。
分かってる、褒めてほしいんだ。
黒無常の欲しがっている言葉であると同時に、素直な感情を伝えてあげる。

「今回の黒無常もとてもかっこよかったよ…!ずっと、釘付けにされちゃった!やっぱり強いよね、黒無常は…」
「うんうん、みこの視線を奪えるなんて光栄なことだ!」
「黒無常のこと……また好きになっちゃった…っ!お疲れ様でしたっ。」
「はは、可愛いな…何度でも惚れろ…骨抜きにしてやるよ。」

幾度も口付けが落とされる。
綺麗な丸みを帯びた黒爪のある手が頬をそっと撫でる。
青の目張りが、黒の中に映える赤い瞳をより一層引き立たせている。
指が唇をなぞり、目を細めて見つめられる。
その合図に応えるように目を閉じながら、空いた手を握る。
唇が合わされば、すぐに舌を絡ませる。
私の言葉は、大層気に入ってもらえたようだ。
名残惜しげに離れた隙間に透明の糸がひく。
いつもならこれで満足してくれるのに、まだ黒無常の瞳は鋭く輝いていた。
まるで、獲物を逃がさんと言うような……
1/6
prev  next