運命の人
※基本モブ目線です
時たま都へ遊びに行って、気分転換することで日々の鬱憤を晴らす。
そんなある時、私は運命の出会いをしたの。

「はッッッ……!?あっ!!泥棒ー!!!!!!!!!!!!」

いつもの様に都に遊びに来れば、田舎者と思われて引ったくりに遭った。
走り去っていく背中に大声で叫ぶ。
自分ではこの人混みをあんなに素早く通れそうにない!


「…?…泥棒だって……あの人、かな?」
「確かに押しのけて来てますね…はぁ…仕方ないですね。」
「誰かー!!!!!!あいつ止めてー!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「みこ、ここで待ってるんですよ。すぐ終わらせますから。」

白無常は走ってくる泥棒と思わしき男が、近づいてくるのをじっと見る。
そして目の前を走り去ろうとした男の腕を、力強く掴んで捕まえた。
片手で引き止める分、泥棒への苦痛も大きい。
痛みで歪む顔のまま相手を見て、怒鳴ろうと口を開けるも閉じてしまった。
きっと誰もが震え上がるような、恐ろしい笑みを浮かべているんだろうな…

「荷物は返してもらいますよ、さぁ歩いて。」
「は、はぁ!?お前が勝手にか……返しに行きます…」
「目的は何です?金で困っているのならば、話聞きますよ。」
「ど、どうせ働けとか言うんだろ!」
「おや、働くのが嫌なんですか?じゃあ死にます?」
「…!?な、何言ってるんだお前…」
「クスクス………あまりからかっては巫女さまに叱られるので、今のは聞かなかったことで。」
「わ…あ、貴方が捕まえてくださったんですね?ありがとうございます!」
「さぁ、ほら、自分で謝罪して返しなさい。」
「盗って悪かった…お、俺はもうこいつ怖いからここには来ねぇ!!じゃっじゃあなぁぁ!!」

少し脅かすつもりが、かなり怯えさせてしまったらしい。
まぁ面倒事が減るならば、それで良いのですが…

「私は都に度々遊びに来るのですが…貴方は初めて見ましたわ…そのお姿は検非違使の方ですか?」
「いえ、そんな大層な役職持ちではありませんよ…都も少し物騒ですからね、お気をつけて。」
「は、はい。あのお礼をしたいのですが…」
「はい?お礼ですか?……いえ、茶飯事の事で慣れてるので、お気持ちだけで十分ですよ。」

軽く会釈し、待っているであろうみこの元へと戻る。
そろそろ何を買うのかも決まったはずだ。
それに受け取るなら礼ではなく、誉が欲しい。
みこは僕達が贔屓せずにちゃんと周りに目を向けると、とても褒めるのだ。
今回も恐らく見て見ぬ振りをせずに対処した事は、褒めてくれるだろう。

「あ、おかえりなさい。」
「お待たせしました、どれにするかは決まりました?」
「うん、えっとね……」
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