出会い
一目連様と出会ったのは…
一目連様に限らず、今関わりのある式神さん達はほぼ晴明様の御屋敷で出会った。
会う人みんな大きくて強そうな鬼ばかり…
そんな中一目連様は親しみの感じやすい方だった。
村の人からもよく小柄だと言われ、同い歳の女の子より少し背が低い私。
そんな私とあまり背も違わず、華奢な人で物腰が柔らかいお方だった。

「禰宜さま、このお方は風神の一目連様だ。」
「は、初めまして…最近身を寄せに参りました…!」
「…君は………いや…そうか、ここはいい所だからね。困った時は我に何でも頼りなさい。」

私を見た時、一目連様は少し驚いた顔をしていたけれど、妖怪でもこんなに優しい人がいるのだと大層驚いた。

「一目連様は何故晴明様の式神に?」
「我は神権を失ってまで民を護ろうとしてな…そのおかげで妖力を失ってしまったのだ。」

だからここで療養しているのだと言う一目連様の横顔は、とても寂しそうだった。

「禰宜殿は何故ここに?」
「私は………」
「…ふむ、辛いことがあったようだな、聞いてすまない。」
「…、…」

傷の癒えない心では何も話せないまま、涙が滲み出るだけだった。
一目連様のせいではないと、首を振るけれど言葉が出ない。

「大丈夫だ、ここにいればもう辛いことには遭わない…泣きたい時は泣くがよい。」

優しく抱きしめ、頭をゆっくりと撫でる手はとても温かくて思わず泣き崩れてしまった。
一目連様は高天原という天界の元にいた神様の一人らしく、その力は強いものだったようだ。
風神としての彼は村人達を心から慈しみ、その姿を見られないと分かっていながらも尽くした。
ある時その村に大災害が襲いかかり、村人達は風神様に縋った。
風の神である彼に天を操ることはできない。
それでも思いに応えるべく、神威に背いてまで村人達を守った。
彼は右目を犠牲に天を操り、全力を尽くしやがて力尽きた。
死ぬ事のできない神は氏子を信じ、妖怪になってまで祠で待ち続けた。
でもその時にはもう村の人達は風神様の事など忘れ去っていた。
祠も朽ち、ますます弱っていく中晴明様に助けられた。

とても優しい神様の悲しい運命。
私は仕えていた神社のことを思い出した。
土地神様は今何を思っているのだろう。
ちゃんと儀式は行えたはず…

「そなたは禰宜であったな。」
「は、はい。宮司様に手取り足取り指導していただきながら、仕えていました。」
「今、その祠は?」
「閉じて、去りました。もう誰も仕えることができないので…」
「今度訪れてなみないか。」
「え…」
「そなたをよく知っていそうだからな。」

微笑む一目連様に心が揺らぐ。
もしかしたら一目連様なら土地神様とお話できるかもしれない…
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