運命
晴明様に話を通せば快諾を貰えた。
さっそく牛車を呼び、一目連様と里帰り。
無常さまと復讐を果たしてから一月以上は経ったのだろうか。
ガタゴトと揺られながら長い道のりを進んでいく。

「ここがそなたの故郷か…」
「スゥ…………ハァ………この空気…落ち着く。」
「とても良いところだな。そなた達の働きが素晴らしい実を結んだようだ。」
「本当ですか…?よかった…」
「祠はどちらかな?」
「こっちです、ちょっと離れた場所にあるんです。」

見慣れた景色に歩きなれた道。在りし日を思い出す。
畑仕事をしていた村の人に声をかけられ、一目連様のことも尋ねられる。
今日はゆっくり過ごしていきなさいね、と暖かく迎えられた。
少し葉の積もった参道を進み、御堂の前に立つ。

「ふむ、ここが本堂か。」
「土地神様はもういらっしゃらないのだろうな…」
「いや…今もいるぞ。」

驚いて一目連様を見ると虚空を見ていた。
そこに土地神様がいらっ…しゃる…?
誰かが話しているのを聞くかのように、静かに頷いている。

「そなたは不思議な子だったようだな。」
「へ……は、はい…」
「そなたにとても感謝している、 宮司殿とよく尽くしてくれたと。」
「……」
「しかしそなた達が襲われているにも関わらず、何も出来なくてすまなかったと。」
「そんな…」
「この村をずっと見守り続ける故心配はいらぬ。」
「……」
「どうか、幸せに暮らしなさい。彼はそう言っていたぞ。」
「土地神様……っ…」

私、土地神様に仕えることが出来て本当によかった。
ここで暮らした日々はかけがえのないもの。
ずっと忘れることはない。

「そなたは聞きたかったのであろう?」
「…バレていましたか…」
「もう少しそなたのことを聞いてもいいか?」
「はい、もちろん。答えられる限りは。」

少し汚れてしまっていた為、開帳し御堂を磨いていく。
綺麗になれば扉を閉め、鈴を鳴らし私の想いを土地神様に伝える。

「手伝っていただきありがとうございました。」
「うむ、挨拶にと思ってな。」
「近くに住んでいた小屋があるので、そちらに行きましょう。」

森に囲まれた神社はいつも爽やかな風が吹いている。
晴明様の御屋敷に行った以来、誰もいない小屋はどこか寂しげだった。
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