活気溢れる祭りを御饌津様と楽しみ、日も落ちかけている道を歩く。

「禰宜様、そろそろ完全に日が落ちてしまいますわ。灯りを焚きますわね。」
「あら…少し長居をしすぎてしまったみたい!」
「楽しかったですから、長居も仕方ありませんわ。」
「この辺りは木々が多いから不安だわ…」
「いざとなったら私がお守りしますわ、安心なさって?」
「くっついても良い?」

灯りを右手に持ち、三尾の右腕を掴みながら暗い夜道を歩く。
ガサゴソと草木が揺れる音と自分達の足音しか聞こえない。
足下が暗い事もあって大きな石に足が引っかかる。

「ひゃっ…?!」
「おっ、と。」
「!?」
「大丈夫か…?」
「く、黒無常…?」

転けそうになった私の体を首元を掴んで、支えたのは黒無常だった。

「ん、後ろから脅かそうと思ったら躓くもんだから、失敗しちまったじゃねぇか?」
「趣味が悪いわねぇ。」
「暗い所苦手なくせにこんな遅くまで仕事してよぉ。」
「仕事って言うか…今日は御饌津様に着いて、お昼からは奉納祭を楽しんでたの。」
「遊んでたら遅くなったてぇ?オイオイ…お前もいたんだろう?」
「禰宜様も村の人に可愛がられていたから、声を掛けようにも掛けれなかったのよ?」
「……へぇ………それで、か…」

急に黒無常の声が低く鋭くなる。

「まぁさっさと帰るぞ。」
「う、うん…」
「物陰に隠れて見えねぇが、しっかりお前を狙ってる奴はたくさんいるぜ?」
「へ…?!」
「何で貴方はそうも不安を煽るのかしら?」
「ヘッ、事実を言っただけじゃねぇか。」
「可哀想に…泣きそうになってしまってるじゃない。」
「かわいーなぁ…大丈夫だからなぁ、俺も居たら安心だろ?」
「そんな笑顔で語りかけてもすっかり怯えてしまってるじゃないの!」

持っていた灯りを代わりに持たれ、にっこりと話かける黒無常が怖い。
やっぱり鬼なんだ…と再認識する。
ギュッと三尾にくっついて、睨みつけてやる。
そんな私に構うことなく更には、この辺りの怖い話までし始めて、更に不安が強くなる。
林を抜けた頃には怖さのあまり涙が溢れて、三尾に黒無常を叱りながらも慰められる。

「無事に抜けれたんだし良いじゃねぇか!」
「やっていい事と悪い事があるわ!」
「いーじゃねぇか別に…どうせ夜も啼くんだしよ…」
「それとこれとは話が違うわ!どうするのよ?恐怖心を植え付けて、通れなくなったら…」
「はぁいはい、ちゃんと後処理はすっから…もう怒んなって…」

三尾のお叱りは屋敷に着くまで続き、泣いている私を見て、心配した犬神にたくさん慰められた。
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