夜も大分更けてきた。
大鍋を皆でつつき、宴となってしまった昨夜。
今夜は慎ましく、蕎麦を食べた。
月があんなにも高く上ってしまっている。
…まだ二人は来ない。

「……ふぁ……ぁ…眠くなってきた…」
「外にいて大丈夫?寒くない?」
「うん…大丈夫…」

ぎゅっと体を寄せて温めてくれる妖刀ちゃん。
待ちぼうけしている私に付き合ってくれている。
遠くから一つ、ごーんと鐘の音が聞こえた。
除夜の鐘が鳴り始めた。
あと百七回…百もあるんだ……まだ、まだまだ時間はある…
細く息を吐けば白い靄が流れていった。
もう一度鐘の音が聞こえる…二回目。

「あの黒白ってば遅刻じゃない…」
「…慣れてるから大丈夫…」

また一つ鐘の音…三回目。
この付近の除夜の鐘は何処にある物なんだろう…

「あ!みこいた!」
「…!」
「すまん!遅くなった!」
「もう鐘が鳴ってしまいましたね…お待たせしました…」
「会いたかった…!」

ようやく訪れた一番一緒にいたかった二人。

「妖刀殿、付き添いありがとうございました…」
「私は構わないわ…それより、みこにたくさん構ってあげて。」
「あぁ、もちろんだ。」

手を振りながら何処かへ行く妖刀ちゃんを見送る。
屋敷を出てしまえば、私達も部屋へと向かう。


「みこ…大分外にいたみたいだな…手が冷てぇ。」
「だって…無常が遅いから…」
「すみません、これでも、とても急いだんですけどね…」
「…お疲れ様。」
「な、抱いていいか?……良い、だろ?」
「もう少しお話がしたいな…」
「では…話をしながらでも触れて良いですか?」

揺れる瞳に見つめられると、嫌だなんて言えなくなる。
僅かに頷いてみせれば、白無常の唇が合わせられる。
片手ずつ手を握れば、悴んだ手も温もりを取り戻す。

「ね…無常はやり残したこと…ある?」
「やり残したことはないな…ただ年が終わる前にみこを抱きたい…」
「みこはあるんですか…?」
「私もないよ…無常と過ごせて今、幸せ…」

今度は後ろにいる黒無常に顎を掴まれて、振り向かされる。
唇が合わさればすぐに舌を絡め合う。
帯を解かれ、寝間着を脱がされていく。
舌が離れればお互いの間に糸をひいた。
布団の上に並んで横たわる。
寒くないように体を寄せ合わせながらも、体を触られる。
無常の大きな手が体をなぞる度に気持ちは昂揚していく…
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