悪運な日
普段からドジっ娘な雰囲気はあるし、実際によく転んだりするのだけど。
危なっかしい様子には小さい頃から慣れてはいる。
だけど、こういう巻き込まれ方は初めてかもしれない…

転ぶ時に僕まで押されて転んだのは良いけど、上にのしかかってとてもいけない体勢になっていた。
胸元に両手を添えて、両足が股の間に揃って、上目遣いで僕を見ている。


「シュネル王、補佐様、お怪我はありませんか。」

「ご、ごめんなさい!!わ、私!!シュネルさまをクッションにしちゃった!!!」

「落ち着いて、大丈夫だよ。君は軽いから、何ともないよ。」

「はううっ、怪我の問題ではなく…!!」

「あの…その体勢では、シュネル王にも補佐様にも不都合になりえますよ。」

「はわわっ!すみません!!」


勢いよく離れて、顔を真っ赤にさせている。
タイウィンの苦悩も分かってしまうなぁ。
でも、そんな姿が可愛いって言うのは、僕も同じだ。



「うぅ…シュネルさまに凄く迷惑かけちゃいました…」

「あいつの事だから、そんなに気にしてないだろうよ。あまり滅入るなよ。」

「でも……訪問客の前でシュネルさまを巻き込んで転んだんですよ…!?」

「うーん…まぁ今日の奴は、内政に詳しい方だから、心配はいらん。」

「うぅ……ちょっと飲み物汲みます…ローマンさんは?」

「そうだな…俺も冷たいコーヒーを貰おうか。」


ドジを踏むことも慣れているし、城内である限りそこまで気にしなくても良いと思うんだが…
まぁ、シュネルへの気負いが強いんだろう。
ため息を吐きながら汲んだコーヒーを傍に置く。
気が紛れる話でもしてやろうかと振り向いた時、予想以上に距離が近く…


「…!?」

「………、……、…?」

「す、すまん…思ったより近かった…というか、近すぎだろう!?」

「あ……れ…?さっき………わたし…」

「いや、本当に悪気はないんだ…たまたま距離が近くて、キスをする形になって…」

「……です…よね……や、やっぱり!私!!」


キスをした、と言われて自覚が追いついたのか、途端に顔が赤くなった。
タイウィンにバレたら、さすがに怒られそうだぞ…これは。
これもドジに含まれるのか?
いやそもそも、近すぎた距離が問題だ!
俺は、俺はただ元気付ける為に…!!


「はぁ……本当だったんだ…」

「何かあったのか?」

「今朝の日報に『今日はラッキースケベな一日』って書いてたんです…」

「どんな占い結果なんだ……しかし…そうか……シュネルと俺にスケベられたのか。」

「うぅ…タウが知ったら絶対怒る…!!」

(同じことを心配してたはずなのに、何故だかタイウィンが仲間はずれに怒る想像が浮かんでしまった…)
「疲れてるんだろうな、きっと…」

「疲れてるのかな…?おやすみしないとダメですね…」

(あぁ…キスは許されないだろうな…どうするべきか……いっそ、黙ったまま忘れてくれ…)
1/3
prev  next