銀色の世界
「メリークリスマス。」
朝から通りかかるみなが、口に出す。
今日は大切な人と静かに年の瀬を惜しむ日だ。
相も変わらず、比例するように事故処理や対処事は増えるが。
近衛隊長という身でもある以上、自分より民達の為に動かなければならない。
しかし、まぁ……君にプレゼントも用意したいのだが…
忙しさも重なってろくに物色することも出来ないまま当日を迎えてしまったわけだ。
ため息混じりの息は少し白さを伴いながら流れていった。
クリスマスイブから年明けの10日間は、雪が舞い散る特別な魔法調節になっている。
私はからっきし魔法の事は分からないが、粋な計らいだと常々思う。
人混みで賑わう中、街中を駆け回る。
決して、人々の邪魔をしないように。
人々を脅かさないように。
そうして気がつけば夜も更け、帰投時間になっていた。
夜間警備隊に後を引き継ぎ、ようやく寮へと戻ってきた。
君は既に風呂を先に済ませ、疲れているのに私を待っていたようだな。
「ただいま、待ってくれていたのか…?」
「ん……?タウ…?おかえり…」
「ご飯をまだ食べていないのか…?すまない、腹が減っただろ?すぐ食べよう…」
「ちょっと待ってね、温め直すよ。」
クリスマスらしくパエリアにフライドチキン、クリームシチューが用意されていたがすっかり冷めたらしい。
温め直す背中を抱きしめる。
あぁ、温かい…心地いい…
「疲れた……」
「あはは…隊長様もお疲れ様です。」
「せっかくのクリスマスだというのに、それらしい事は出来ないまま終わってしまうな…」
「うん、そうだね…でも…普段と違う事ってそれっぽいご飯にケーキを食べることくらいな気がする。」
「…確かにそれもそうだが……私は君にプレゼントを用意したかった…」
「ふふ、毎年気にかけてくれるよね、ありがとう…その言い方だと今年は用意出来なかった感じ?」
「ああ……申し訳ない…」
「ううん、プレゼントが欲しいって言うより、こうしてタウとくっついてる方が好き、だから…」
「……、……あ、あぁ…愛してる…!」
健気な言葉に思わず、愛しさが溢れて強く抱きしめる。
疲れで廃れた心がじんわりと癒される…
私は君が居ないとダメ…なんだ……
すっかり弱ってしまった心が、もっと甘えたくなり、すがりたくなり、離れたくない。
「タウは冬によく似合うよね…」
「…?私が、か…?」
「うん…雪みたいにキラキラしてて綺麗だもん…でも、儚いところも似てるかも。」
「そうだろうか…君が言うのならそうかもしれないな…」
儚い、か…
君もそういう点では雪によく似ている。
しっかり、だが、そっと包んでいなければ、手元から離れてしまいそうだ。
「もうすぐ終わっちゃうけど…メリークリスマス…♡」
「…メリークリスマス…」
触れ合うだけのキスをする。
これだけでも、良い。
この少しの触れ合いだけでも、私は今年も良い一日だったと思ってしまえる。
嬉しそうに心地よさそうに抱きしめてくれる君を見れば、杞憂も晴れてしまう。
来年こそは、ゆっくり二人で過ごそう…
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