祝福の夜
全く言葉も無い、世話が焼ける奴だ。
せっかくのクリスマスだと言うのに、お前はシュネル王に扱き使われて。
あのガキが自分とリシャの為に半日休暇にしたのが無意味になるだろう!?
パタパタと駆け回るその腕をとっ捕まえ、空き部屋に引き込む。

「ひゃあっ!?な、何!?」

「しー…俺だ…今日が何の日か、忘れてないよな?」

「く、クリスマスでしょ?分かってるよ…そう言うタイウィンはどうして?」

「エルバレンはリシャに甘いからな。」

「んー…なるほどね、何となく分かるかも。でも私は見ての通り年末の忙しさに振り回されてるの。」

「待てって…良いだろう、この俺が用意してやる。何が必要だ?」

「え……?あ、あぁ…ご飯ならもう作ってるけど……」

足りない物を聞いた後に腕を離す。
俺が来たと分かっているならば、早めに帰る努力をするはずだ。
それに用意も…今から帰宅時間までたっぷりと時間はある。


…遅い、ふざけるな。
あの貧弱な王は、思いやりも欠如してるらしいな。
迎えに行こうかと腰を上げると同時に扉が開いた。

「はあ……お待たせ……」

「疲れきってるようだな、そんなにも重労働だったのか?」

「まあね…うん……もう何も考えたくないや…」

「ほら、来い…いや、それより腹が減ったか…少し前に温めなおしたから、食べられるぞ。」

「え…!ありがとう…さっそくいただきます…!」

手当たり次第に作り置きした物を口に入れていく。
その様子を眺めていれば、少しは扱き使った事を許してやらなくもない…
一生懸命頬張る頭を撫で、髪にキスを落とす。

「タイウィンは食べないの?」

「ふっ、どれを食べてほしい?」

「んー…パエリアとシチューは私が作ったの。気が進む方で良いよ。」

見慣れぬ飯を一口食す。
お前が作る物なら、例え知らない物でも安心して美味だと食える。
材料を何となく分析しながらも、料理の腕前を堪能する。
お前が作ったと言う分け与えられたパエリアとシチューを平らげた。

「美味かった、さすがだな。」

「良かった、あまり作り慣れてない物だったけどね…」

「お前が作った、俺にとってはそれだけで美味いのが確定している。」

「何それ…大袈裟だよぅ…」

「クリスマスにも頑張ったお前に、俺からプレゼントだ。」

「へ?よ、用意してくれたの…!?」

「当たり前だろう?安心しろ、お返しはいらない。さあ、受け取ってくれ。」


近づき髪を耳にかけ、さっそくイヤリングを付ける。
あぁ、良いな。
派手な物を嫌がるし、下手すれば耳を傷つける。
他に引っ掛けず、しかし目立つ物を俺なりに選んだつもりだ。
付けた姿を手鏡に写しお披露目してやった。

「あ…可愛い…ありがとう…」

「気に入っただろう?イヤリングなら穴を開ける必要も無いからな。」

「耳にピアスやイヤリングを付ける意味って知ってる?」

「もちろんだ。色々お前を想って選んだ物だからな。失くすんじゃないぞ。」

「うん、ありがとう…お返しは明日でも大丈夫かな…?」

「いや…お返しはお前…だろう?」


俺は最初からそのつもりだった。
疲れていようが、早く寝たいと思っていようが、俺には関係ない。
さあ、早く俺と聖なる夜を過ごそうじゃないか。
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