うわさ話
近頃どうやら近接兵の士気が、突出して高いらしい。
何があったのかは分からないが、これは良い事だ。
しかし、やはり『どうして高まったのか』を調査しなければならない。
内部スパイ、不正売買、反逆…
そういった負の要素が原因で高まっていた場合、これは国にとって脅威でしかない。
普段から近衛隊長として訓練には顔を出している為、調査しに行っても怪しまれはしない。
この士気の上昇が、悪い要因でなければいいが…


「なぁなぁ…どれだけ進んだんだ?」
「あぁ、あともう少しだから。落ち着けって。」
「落ち着けるかよ〜、お前がまさか才能持ちだったなんてなー。」
「うははっ、見れるのが楽しみだぁ!」

集合時間前に雑談している兵達に耳を傾ければ、気になる声が聞こえた。
何か企みが行われているらしい…
真ん中でせがまれている者が、中心的存在らしい。
才能持ちという言葉から察するに、作品制作でもしているのだろうか。
芸術が発展したレファンドスでは、たとえ兵隊であろうとも、そういった事を息抜きにしている者も多い。
一応マークするとして、他には特に気になる会話はない。

「あ、いた。タイウィンさま、今日はこっちにいるんですね。」
「ん…ミコか。外での公務がないみたいだし、最近見れていなかったからな。」
「ミコさん、おはようございます。」
「おはようございます!」
「ミコさんもこ、こちらに配属ですかっ?」
「訓練の様子は見たいですけど、シュネル様のお手伝いしなきゃなので…!」
「ぐぁ〜〜〜!そうなんですねー、残念ですー…。」
「うぅ、私もです…!タイウィンさまの確認が出来たので、私は戻りますね。」
「シュネル様のフォローは頼んだぞ。」
「はい!では、また来ますね!」

そういえば、今朝はいつも先に向かう私にだけこっそりとローマンが話しただけだった。
いつも一緒にいるのにいなかったから、探しに来るのも当然か…
彼女が来たことにより、隊員達の気分が上がっている。
やはりミコはこの男所帯に対して、大きな影響力を持っている。
時間になったところで、声を張り上げてさっそく練習を開始した。

「なるほど、それでタイウィンさまはあっちに…」
「暫くは特別演練扱いで派遣していたら、彼の事だし不思議に思う人もいないだろうからね。」
「ミコは兵の士気が上がった理由は、何だと思う?」
「ん〜〜……隊員さんの中で何かが流行った!」
「その何かは何だ?」
「な、なんだろう……男の人が好きな物とか…」
「男が好きな物かぁ。ミコの予想って案外外れないから、それを信じたいな。」
「その方が面倒事も少なくて済むが…」
「でも私、平和ボケしてるから当てにならないですよ。」
「いや、心の拠り所になる考えもあると、気が楽でいい。」
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