もう
手紙を送った後、その隊員は辞職したらしい。
下心しかなかったという訳か。
今度の公休日にもミコがやって来た。
それも手作りのお菓子を持って。

「この前、お疲れ様の差し入れ用意するって言ったからね!カップケーキを作ってきたよ。」
「…………あぁ、あれか。そうか、ありがとう。」
「こっちはアーモンド、これはチョコ、こっちはチーズ仕立てだよ。」
「たくさん焼いてきたんだな。待ってろ、飲み物を用意しよう。」
「一緒に食べようと思ったんたけど、ちょっと作りすぎちゃったかも。」

照れ笑いする君も可愛いな。
私のために作ってきただなんて、健気だな。
焼き菓子に合うカフェラテを注ぐ。
苦いのが苦手な君には砂糖も添えて…
午後の日差しが差し込む窓際で、他愛もない話を交わす。
この時に決して仕事の話はしない。
カップを一つ手に取って、口に入れればほんのり温かい甘みが広がった。
作りたてを持ってきてくれたんだな。
君はどこまでも私の事を大切に想ってくれる。
なぁ…それでいて、特別な気持ちがないなどありえないだろう?

「ミコは料理上手だな…」
「本当?実はね、ご飯を作るのが好きでここに来てから練習してたの!」
「そうだったんだな…努力の成果が出てるぞ。」
「作ったものを美味しい、って食べてもらえるのすごく嬉しいの。だから、また作ってきちゃうんだ…」
「あぁ、本当に美味い。毎日お願いしたい位だ。」
「えぇ…それって何だか夫婦みたい…!」
「あぁ、私はそうなっても良いんだがな…」
「……え?」

ぐっと距離を縮める。
肩を抱きながら、今まで隠していた気持ちを露わにする。
君が好きで、好きで、可愛くて、愛おしくて、愛したくて、愛されたくて、離したくなくて、捕まえたくて、ずっと、ずっと、恋心が苦しくて堪らないんだ。
顔を赤らめながらも、私の言葉を聞いている。
だが、そっと胸元を押し返された。

「う、嬉しいけど……急に言われても…」
「……何だ?私が急に君を好きになったと言いたいのか?」
「だって、ずっと面倒見ててくれてたし…そんな素振りは一度だって……」
「何故ずっと面倒を見ていたと思う?」
「それは…成り行き…?みたいな……」
「違う、君を愛しているからだ。愛がなければ、面倒など見れるわけがない。」
「うぅ………でも……そんな急に好きになんてなれないよ…」

好きになれないと言うくせに、どうしてそんなにも顔を赤らめるんだ?
8/10
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