こうすれば…
それから数日後、ミコが自室へと戻ってきた。
宿泊も楽しみ、休暇を満喫した事もあり、リフレッシュ出来たらしい。
だが、例の件については解決出来ていない。
また、不安に思った時はどうするのだろうか?

休憩時間に手招きをされた。
私に用事なんて…何だったとしても嬉しいな…
人目離れた場所でこっそりと一枚の紙を見せられる。
よく見ればそれは手紙で、しかも何とも気持ち悪い文だった。

「どうしよう…やっぱり私、お仕事が好きだし、シュネル様が一番だって思ってるのに…」
「そのまま届け主に、断る手紙を送れば良いんじゃないのか?」
「でも…これが届いたのは、もう一週間前なの。その間、この手紙主らしき人に執拗に見られてることに気がついたの…」
「どうしてこんな手紙を温めてしまうんだ…初めから断るつもりではあったんだろう?」
「うん…どうせお付き合いしたって、一般兵士とシュネル様の忙しさは比べ物にならないからね。でも…」
「……断るのが心苦しいのか?」
「だって…せっかく好意を持ってくれたのに、拒絶するなんて…」
「私から見れば、このままの方が良くないと思うが。」

肩を掴んで、言い聞かせるように説得する。
このまま断る事をしないと、それはつまり許容の意となる。
そう受け取られれば、相手は君を勝手に恋人に仕立て上げる。
となると、ますます拒否しづらくなる。
だからこそ、ちゃんと自分の意思を伝えなければならない。
……それに、得体のしれない男に対して心配なんてしなくて良い。
君が考えても良いのは、シュネル様やローマンか、私だけだ。

「……分かった…誤解されるのも嫌だからちゃんとお返事出す…」
「あまり納得してないみたいだが?」
「うぅ………何て書けばいいのか…」
「……よし、ならば、私が代わりに出そう。仮にも君の上司だからな。」
「え…?タウが?何て書くの?」
「『仕事以外の事を考えている暇はない』って。つまりは、そう言いたいんだろう?」
「う、うん………なら…お願い、します…」

あぁ、任せてくれてありがとう。
ちゃんとその男には伝えておこう。
必要のない好意は、不愉快になる、と。
残りはどう書けば、後追いがいなくなるかだな。
ミコを振り向かせようとする、無駄な考えを捨てさせるには…
ふむ、そうだな…眼中に無い事を伝えれば良いか?
『シュネル様と私の事を案じるので精一杯』なのだと。
7/10
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