1つ目
様態の悪いシュネル様を看護する中、セシリア様がお力添えしてくださっていた。
セシリア様はウェンテンベルクの女王で、以前から交流はあった。
その多彩な知識を生かし、私たちの相談を真摯に聞いてくださっている。
……のだが。

「……先程から私を見つめてどうしました?」
「へ…あ、い、いえ…すみません…」
「ミコさんも何かあったら、どうぞ遠慮なく言ってくださいね。」

遠慮なく、と言われてもまさか…
貴女の胸と見比べて杞憂してました、なんて口が裂けても言えない…

「あはは、僕ばかりの話で困らせてしまってごめんね。」
「いえ!シュネル様には一日でも早く快復していただかないと!」
「あまり思いつめても何ともならないよ。そうだね…セシリアさんと話をしたらいいよ。」
「ですが……」
「もう何日も僕が拘束してしまってるんだ。少しは息抜きした方がいい。」
「………」
「シュネルさん、実は私…彼女と話がしてみたかったんです。レファンドス王国で活躍する女補佐…とても興味があります。」
「そうだったのかい?なら、なおさら話してみないと。いい友人になるかもしれないよ。」
「……セシリア様がそう仰ってくださるのなら…ぜひ。」

話し合いも進まないでいた会議をやめ、セシリア様について外へと出る。
緊張しかしない。

「そう堅くならないでください。前々から話をしたかったのだけど、機会がなかったものだから…」
「嬉しいお言葉、ありがとうございます。」
「ふふ…可愛い子ね。ウェンテンベルクは私以外にもたくさん女騎士はいるけれど、レファンドスじゃ貴女以外見たことがなかったので。」
「えぇ、その通りです。給仕さん以外は皆男性ばかりです。」
「大変そうですね、確か…隊長補佐なんでしたっけ?」
「はい!タイウィン近衛隊長の補佐を担っております!」
「そう、シュネルさんも良い部下に恵まれていますね。」

そっと頭を撫でられ、思わず体を強ばらせてしまう。
セシリア様になでなでしてもらえるなんて、思わなかった…!

「あの…セシリア様…」
「どうしました?」
「私、セシリア様に憧れているのです!」
「あら、嬉しいですね。どうしてでしょう?」
「頭脳明晰で槍の名手、それにお美しい方で…何でもこなされるセシリア様をとても尊敬しております。」
「ありがとうございます、貴女も劣らない素晴らしい実力の持ち主だと思っていますよ。」
「そ、そんな…」
「シュネルさんも言っていた通り、私の良き友人になっていただいても?」
「…!身に余る光栄です!ありがたくそのお気持ちを受け取らせていただきます!」
「まったく…可愛らしいわね。」

微笑みながら頬を撫でる手は、とても優しくて温かかった。
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