その1
《頭空っぽに平和な世界線として。》
《ラス達の元に集まってる設定、言うなればゲーム画面状態。》


「ハロ〜!ミコ、元気ー?」
「ひゃっ…ユナ、びっくりするからだめって言ったのに…!」
「えっへへ〜ほっぺた膨らませたミコもかわいいね〜!」

背中から飛びつき、気さくに話しかけるユナさんに拗ねてみせたが、膨らませた頬はつつかれて萎んでしまった。
レファンドスでシュネル様に仕えていた際は、どうしても男所帯にぽつんと花が飾られた状態になっていた。
鎧を着込んだがたいの大きい者たちに挟まれ、小さな体をさらに小さくする日々。
それが今や、その華やかさをいっぱいに広げている。
聖約の継承者殿の名のもとに集まったこの集会所。
作戦会議の本場である酒場を出て、少し歩くと鍛冶屋と寮もある。
私達は力を貸す代わりに、シュネル様を探す手助けする条件で共に行動している。
ミコはその中で歳も近く、明るい性格のユナさんと意気投合したようだ。
近くで微笑ましく思いながら二人のやり取りを眺める。

「あのね!コショコショ………どうかな?」
「え、えっと…それは…その…もちろん……」
「だよね!乙女だもん、知りたい事はいっぱいあるよね!」
「……ほ、ほんとうに…大丈夫なの?それは…」
「大丈夫だよ〜!前はラスに仕掛けたのをアルキィに食べられちゃったけど……効果はバッチリ!」
「あはは…」

顔を赤くさせたと思えば、不安げに見つめ、困ったように笑う。
コロコロと表情が変わる彼女を見るのは飽きない。

「じゃあ余った分渡すね!」
「あ、ありがとう…」
「………ふふっ!じゃっ!任務任されてるの行かなくちゃー!」
「いってらっしゃい。」

見ていたのに気づき、ウインクをされた。
そして、慌ただしく丸い物に背中を押されながらも走り去って行った。
ミコは手の中に何かあるのを見つめて、少し悩んでいる様子。
内緒話をされていたようだが、一体何を渡されたのだろう。
周りをキョロキョロと見渡し、後ろ側に私がいるのを見つけると驚き飛び退いた。

「タタタタタッ…タイウィンさまいつから?!」
「ユナさんが来る少し前からいたが…」
「えっ……?!」

そういえばユナさんが来る前から落ち着きがなかった。

「何を渡されたんだ?」
「へっ?!ひっ秘密です!」
「ふむ…では、落ち着きがなかったのは?」
「え、えっと……」

冷や汗をかいて必死に目を逸らす。
うまく誤魔化せる言葉が見つからないのか、次第に体を縮こませていく。
降参する時はいつも両手を口元に寄せ、寒さを凌ごうとする姿になる。

「大丈夫だ、何も追求したりはしない。」
「ほ、ほんとですか…!ふぅ…」

安心したのか、部屋に戻ります!と足早に酒場を後にしてしまった。
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