その2
タウが後ろにいた時はヒヤッとしたけど、何とか部屋に戻れた。
けれど、これ…どうしようかな…
ユナから貰った「お喋り薬」…
その効能は普段心に思っている事まで、ぽろぽろと喋ってしまうようになるらしい。
効き目は飲んでから1時間後に出始め、3時間程度で切れるとのこと。
アルキィくんで成功したと聞いても、いまいち信用出来ない…
もしこれでタウの体調を壊すことになってしまったら…!!
でも渡されたのは一回分だけの少量。
自分で試せば、足りなくなってしまう。
そ、そうだ……いつものお礼にクッキーを焼こう!
その生地に練り込めば…もし悪いことになっても少しお腹を緩ませてしまう位…
……………
そんなのだめだよーッッ!
きっと私がタウの為だけに作ったと渡せば、大喜びするだろうし…
なのに…それで食あたりしたとなれば、とても傷つくに決まってる!
で、でも…………知りたい、聞きたい…
タウがいつも私に対してどう思っているのか…
二人きりの時にたくさんスキンシップを取ってくれて、好きだよ…って言ってくれるけど…
けど…!
私はずっとカッコイイなって思いながら、一緒に旅をしてるのに…
……………


「こ、これ…タイウィンさまに…」
「…!!差し入れか、感謝する…!」

数日後、彼女から小包をプレゼントされた。

「いつも守ってくださるから…お礼に……クッキーを……お口に合うかは分からないですけど…」
「キュキュ〜!アルキィの分はないアルゥ?」
「ないに決まってるじゃないか…」
「とても嬉しいぞ…今食べてもいいだろうか?」
「えっ?!え…あ……はい……どうぞ…」

ど、どうしよう…
やっぱり予想通りというか…
目を輝かせて、嬉しそうに微笑んでいる。
いつもの真面目なお堅い隊長さんの面影がない位に上機嫌。
一口サイズのクッキーが10個。
もちろん薬を混ぜた。
欲には勝てなかった……
だからこそ、今少し焦っている。
こんなに純粋に喜んでいる人を騙すような事をしてしまって…!

「うん、やはり美味しい。少し甘めのこの味、久しいな。」
「へぇ、前にも貰ったことがあるのか?」
「えぇ、彼女とは以前から知り合いですから。」
「アルキィ知ってるアルゥ。ミコとタイウィンは幼なじみアルッ!」
「えっ?そうだったのか?」
「な、なぜそれを…」
「ミコが教えてくれたアル〜……あっ、これ秘密だったアル…」
「「…………」」

アルキィさんの言動に唖然としてしまった。
ラスさんも呆れて言葉が出ない様子。
思わず他に人がいないものかと見渡した位に焦った。
幸い誰もいなくて助かった。
表向きには隊長とその補佐の関係であるのだから、公表されては困る。
後でミコにも少し説教をせねば…

「アルキィくんってば酷い…秘密だって言ったのに…!」
「ご、ごめんアルゥ…」
「もうアルキィくんにお菓子あげない…」
「キュキュゥッ?!それは嫌アルーッ!」

少し涙ぐんで悲しそうに訴える。
器用に椅子の上で膝を抱え、顔を隠してしまった。
言ってしまった事はどうしようもないし、他に聞いた人がいないからまだ大丈夫だ。

「ミコ、美味しかったぞ。その…さっきの話はラスさんしか聞いてないから、大丈夫だ。」
「………」
「よければ、また作ってくれないか?」
「…!……はい…」

照れたように顔を半分覗かせながら、返事をした。
どうやら気を逸らせたようだ。
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