痛い目
「なかなかに可愛かったぞ?隣にいるだけよく見ているな?」
「う、うるさいっ。」
「クククッ…俺もミコの真似をしようか?」
「しなくて良いっ。」
「…タイウィンさま、大好きです♡」
「やだぁっ!物真似しないでっ!」
「ははは、全く痛くないな。」
「んーーもうっ!!」

胸板をそれなりに叩いているつもりなのに、笑い飛ばされている。
私の声に似せようとした少し裏声で、耳元で言うなんて意地悪すぎる!

「意地悪なタウなんて大嫌い!」
「ほぅ?そうか…あぁ、今日は失態を犯してしまって、背中の傷が痛むのにな…」
「へっ?!だ、大丈夫…!?す、すぐ手当するから!」
「ふっ、嘘に決まっているだろう。嫌いと言った癖に、可愛い奴だな。」
「……本当に心配したのにっ!…本当に怪我してない…?大丈夫…?」
「そうだな、お前に嫌いと言われて傷ついた…」
「う……そ、そうじゃなくて、体の方!」
「あぁ…嫌われてしまった…心が引き裂かれそうだ…っ。」
「ご…ごめんって……好き、タウのこと大好きだからっ。」
「はぁ……あぁ…もう体が鉛のようだ…俺を癒してくれる妖精がいなくなってしまって悲しい…」
「そんな事言わないで…ねっ、タウ…ごめんね…ほら、ギュッてしよ…?」

頭を抱えるように抱きしめてあげれば、胸に顔を埋められる。
手がお尻を揉んで、とても恥ずかしいけれど我慢、我慢…
よしよし、と頭を撫でて、怪我なく帰ってきた事に安心する。

「おかえり、タウ…」
「あぁ、ただいま。怪我どころか、返り討ちにしたから安心しろ。」
「良かった…今日は一緒に行けなくてごめんね…とっても退屈だったよ…」
「俺も、ミコがいないといまいちやる気が出ない。」
「お疲れ様、タウ。」
「いい子で待っていたか?」
「ま、待ってたよっ。」
「本当か…?」

ただいまのキスをするのかと思っていたのに、思いがけず見つめられて冷や汗が流れる。
勝手に鍛錬に参加したから、『いい子』に待てていない…
も、もしかして誰かが報告したのかな…?

「ちゃんと待ってたよっ!」
「そうか?その割には嗅ぎなれない臭いがするぞ?」
「備品整備してたから、その臭いじゃないかなっ。」
「ほぉ…備品はこんなにも男の臭いがするのか?」

な、なんで…?!
誰かにくっついたわけでもないのに…

「今日は何をしていた?正直に言わなければ、お仕置が必要になるが。」
「う……び、備品整備して…それから……鍛錬に参加しました…」
「ミコの独断で?誰がそんな事をして良いと言った?」
「だ、だって…暇だったんだもん…それに鍛錬の様子も見てみたかったし…」
「ふーん…?俺がいない間なら良いと思ってのことだろう?」
「そ……そうです……」
「そうか…ならば、お仕置が必要だな?」
「…!!ご、ごめんなさい!勝手なことして!!もうしないから許して!!」
「悪いことをすれば、お仕置は当たり前だろう?罰は受けるのが当然というものだ。」

くるまっていたマントを剥ぎ取られ、代わりに腕を縛られる。
どうしよう…やっぱり、こっそりするんじゃなかった…
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