不成立
確かに金目当てであれば、この男の人のルックスも含めて文句なしと言えるだろう。
だけど、お互いそんな薄っぺらい付き合いをしているわけではない。

「賞金なんて貰えなくても良いです。私は彼から離れたりしませんっ。」
「私も彼女を離すつもりは無い。」
「は…?…まぁ皆そう言うがな。もう少し落ち着く場所へ参ろう。」

一気にこの男に対する警戒が高まる。
ラスさんの言っていた取引はこの事で間違いないだろう。
少し後から男について行く。
会場から離れた場所に先程と同じような大きさの屋敷の中に招かれる。
中に入ればむせ返る程の甘い匂いに包み込まれた。

「お前たち、接待しなさい。」
「はい、御主人様〜♡」
「な、なんですか…ここは…」

水着のような下着だけを身につけた女性が、複数人いる。
彼女達はミコを私から引き剥がして、体を誘うように撫でる。
何なんだこれは…あまり乱暴な事はしたくないが、流される気もない。
擦り寄る腕を一本ずつ丁寧に外す。
引き剥がされてしまったミコが、不安からか泣きそうな顔をしている。
早く抱きしめて安心させてやりたい…
男はそんなミコの腕を掴み、自分の元へと引き寄せようとする。
必死に嫌だと抵抗するも力の差で、強制的に肩を回される。
それ以上ミコに触るな…ッッッ!!!!!!

「ひ……うぅ……いや……はなして…」
「そろそろ、この匂いに慣れてきたんじゃないか?」
「いや……きもちわるい………」
「んん?気持ちいい…だろう?」
「彼女に触るな!すまない、君達には罪はないが…許せ!」

何度も何度も絡みつく腕に遠慮をしていては、埒が明かない。
力尽くで押しのけてミコの腕を取り、自分の胸元に引き返す。
ぎゅっと片腕を抱かれる。

「この女性方も先程の取引で買ったんですか?」
「買った?人聞きの悪い…彼女達は自ら俺を選んだ。」
「何とでも言えますよ、ただ私は譲るつもりは無い。」
「クスクス……その娘の様子の変化に気づきもしないで…」
「…?一つ聞きたい、この甘い匂いは何だ?」
「ただの香だよ…気分を昂揚させる、良い香りさ。娘よ?身体が疼いているのだろう?さぁ、乱れろ。」

髪に隠れて表情が見えない。
抱かれていた腕を動かしたと思えば、指先に生暖かい感触が訪れる。
その感触から甘い痺れが身体中に拡がる。
確かに様子がおかしい。
肩を掴んで向かい合わせ、顔を見ればすっかりと顔が蕩けていた。
思わぬ表情に理性がぐらりと揺れる。

「ははは、予想外か?お前もこの匂いに浸るといい。話の通じない奴はつまらん。」
「………」
「乱交パーティといこうじゃないか。」

先程まではしっかりと聞こえていた男の声が、反響して聞こえる。
脳内に悪魔の囁きが響く…
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