終着
最後のパズルを解き終わると、部屋の壁からカチッという音が聞こえた。
どこから鳴ったのか探せば、壁の一部が少しだけ浮いていた。
引っ張れば小さな空間があり、そこに綺麗な装飾が施された小箱が置かれていた。
そっと開ければ出口の鍵と思われる物が。

「…!早く戻ろ!」
「やっと終わるのか…!」

腕を掴んで、入ってきた扉へと急ぎ足で戻る。
ホールに戻ればまだ静まり返っていた。
確認の為に扉に手をかけてみたが、鍵はかかったままだ。
ドキドキしながらも鍵穴に挿せば、見事に嵌りすんなりと開いた。
重い扉を開き放てば、一人の男性が手を叩きながら出迎えた。

「最初から最後まで素晴らしい活躍でした!実に楽しめましたよ。」
「あなたは…このイベントの主催者でしょうか…?」
「その通りだ…しかし、まさか本当の鍵がある部屋に勢いだけで入って、クリアまでしてしまうとは!」
「………へ…?ということは…残りの部屋はダミーなんですか?」
「そうでないと面白くないだろう?」

悪気なく…清々しい笑みを見せる男に思わず苦言が出そうになる。
…と、男はミコの手を握った。
思わぬ行動をされて、体を強ばらせている。

「そなたは可愛らしいだけでなく、謙虚でありながらも決して挫けない強い心を持っている…何と美しいことか…」
「あはは…ありがとうございます…」
「優勝したそなた達には賞金1億ゴールドをやろう!」
「い、1億…?!」
「そして娘よ、お前には俺の財産権を分け与えよう…」
「ふえぇえ…っ?!」
「…少しお待ちください…確か財産権と言うのは、遺言書による提示か婚姻相手のみだったはず…」
「…?でも遺言書なんて……」

どう見ても目の前の人は、あと何十年も元気に生きていそうな見た目だ。
すりすりと撫でるように握られた手を触られる。
その度に背筋に悪寒が走る。
できれば…早く離してほしい…

「ふん…そうだ、娘よ、お前は俺と婚姻を結ぶのが前提条件だ。」
「え…そ、そんなのお断りするに決まってます!」
「そうか、ならば賞金も0だな。」
「えっ…?!な、何でですか?!」
「お前が俺と婚姻を結ばないというのに、何故金を渡さねばならない?善意だけで渡すわけがなかろう。」
「…つまり、その金は私への引掛金…彼女を1億で私から買い取ると…そうですね?」
「そうだ、何だ?こんなにも合理的な取引が他にあるのか?」
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