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町娘設定

クラインスト王国騎士が街の巡回をしているのを高い場所から眺める。
城下町の一角にある個人で営業しているケーキ屋を営みながら。
経営は一人でやっている為に、品揃えは少なく営業日も水土日だけ行っている。
ショートケーキを数種類と焼き菓子をメインに売り、ホールケーキはオーダーのみの受付。
緩く経営している店ではありながらも、腕前を評価されている為か、毎回終了時間前に売り切れてしまう。
今日はオーダーもなく、営業日でもない穏やかな一日。
二階の窓から見下ろす中心街を歩く人々をぼんやりと眺める。
ふと、見慣れた青い髪の彼が指揮を取り始めた。
声はここまで届いてこないが、凛とした声を思い出すのは容易だ。
巡回していた騎士達が命令で散らばった後、彼がこちらを見上げた。
嬉しさに思わず手を振れば、気恥しそうにそっぽを向いて城の方へ帰ってしまった。
うーん…やっぱり気難しいなぁ。

その日の夜、チリンと住居側扉のベルが鳴り誰かが訪れてきた。
パジャマ姿で出迎えれば、エドモンドが制服のまま立っていた。

「エド!来てくれたんだね、私はもうお風呂に入っちゃった。」
「気にしなくてもいい。急に二日ほど城内の仕事がキャンセルになったからな。どうせならと思って帰ってきたんだ。」
「あっ、昼間に手を振ったのに、振り返してくれなかった!」
「ゴホン……仕事中に惚気けることなど出来ない。我慢してくれ。」
「むぅ…だからって逃げるように戻らなくても…」
「に、逃げてなどいない…すまんが、何か飯を作れないか?」
「え!早く言ってよ!作るから先にお風呂入って?」
「分かった、ありがとうな。」

急に休みになるなんて、たまにある事だけど珍しい。
エドモンドがクラインスト騎士団副団長という身分上、あまり一緒には過ごせない。
けど、暇が出来れば必ず来てくれる優しさがとても嬉しい。
多めに作って余っていたおかずを温めて、食卓に並べる。
少し後にシャワーを浴びたエドモンドが、行儀よくご飯に手をつける。
その後ろから長い髪をタオルで乾かしていく。
いつものくせっ毛も濡れている今は、ぺたりと丸まっている。
指通りの良い髪をしっかり乾かして、食べ終わった食器を片付ける。
今日含めて三回も一緒に寝れるんだ…
やっぱり一緒に居られるのは、とても嬉しくて自然と頬が緩む。
あまり喜んでいると、またエドモンドが照れてしまうから、気をつけないと…
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