おにぎり噺


生存確認用。おにぎりの噺はしません



おにぎり根多帳

2019/07/01 21:38

数馬と不良忍たま
男主
長いけど突然終わります。
数馬と仲良くなる話

男主=あなた=** 
三年は組
悪ぶった様子でよく授業をさぼるが根は穏やかで優しい。


始業の鐘がなり、午後からの授業が始まる。三年は組の三反田数馬は、隣にいなければならない生徒の姿がないことにため息をついた。教師がやって来て、数馬の隣の空の席を見つけ、怒ったように言う。

「まったく、**の奴またサボりか。あのままでは、来年こそ進級は無理だな」

生徒たちが**の席を見ていろんなところでこそこそと話始めた。「真面目じゃない」「不良忍たま」「退学しないのか」そんな学級として輪を乱す**に不満の混じった声が至るところで聞こえる。**はサボりの常習犯であったので、諦めかけている教師は仕方ない様子で授業を始めようとする。

(僕は知ってるんだ。彼は悪い人じゃないってことを)

数馬は気まずそうにうつむいて授業の事を考えずあることを思い出す。それはある満月ののぼる深夜の事だった。数馬が厠から部屋へ戻ろうと長屋を歩いていたとき、トンという音がした。上級生が訓練でもしてるのかと思い、怪我などしてないだろうかとうっすら気がかりになった数馬は足音を殺して音のする方へ裸足で歩いた。

音のする先は手裏剣の練習場。いくつも並ぶ的の一つを、ある忍たまが狙って手裏剣を打っていた。

「っ!」

彼はまたひとつ、手裏剣を投げる。それは見事なものだった。重く、扱いにくい十字手裏剣をうまく使いこなしている。その忍たまは誰だろうと数馬は目を凝らすと、どうやら同じ色の忍び服だ。

「だれだ?」

ふっとその忍たまは振り向き数馬の方を見る。その声は聞いたことのある声だ。同じ学級の三年は組の**だろう。

「ごめん。僕だよ。同じ学級の三反田数馬」
「・・・そんな奴いたか?」
「いるってば!!君は**だろ?いつも授業をサボってる、不良忍たまって言われてる」
「そんなこといわれてんの?」

**は手裏剣をうつ手をおろし、数馬の前へやってくる。ようやく見えるようになった彼の表情は薄ら笑いを浮かべていた。数馬はうん、と頷く。

「授業もサボってる不良の君が何で手裏剣をうってるの?」
「悪いかよ。俺が手裏剣をうつのが」
「い、いや、そんなんじゃなくて!」

**はとげのあるように聞こえた数馬の悪気ない言葉に睨みをきかせる。その凄みに怯えた数馬はあわてて首をふる。そんなうろたえた数馬を見てくすりと**は笑った。

「悪い悪い、冗談だ」
「うう、僕喧嘩とか苦手だから・・・脅かさないでよ」
「喧嘩なんかしないよ。俺もヘーワシュギ、だからさ」
「不良なのに?」

数馬が恐る恐るそういうと、**は少し寂しげな顔をして視線を落とす。

「別に、ツッパってないし」
「そうなの?じゃあなんで授業に出ないんだよ。先生も、学級の皆も心配してるよ?」

**はふっと黙って、先ほどまで自分がうっていた手裏剣の刺さった的を見る。

「好きでここに来た訳じゃないから」
「ここって・・・忍術学園のこと?」
「うん。俺の実家は町の大きな商家で、そこの長男だったんだ。年子の弟が一人いるんだけどさ」

**は自分の身の上を語り出す。他の生徒に自分の事を話すのは初めてだった。この、数馬という生徒はきっと多言などしないだろうと何故か思ったのだ。

「相続だのなんだのって親が煩くて。いわゆる成り上がりのきたない性根が俺はだいっきらいだったんだ。だから弟に任せて俺は出家しようと思ったんだけどさ」
「出家?」

数馬は考える。確かにこの時代なら、兄弟や親戚のある家系だと相続争い、武士なら権力争いになることはよくある。自分に争う意思がないことを表すために出家をする者もいるのだ。きっと**もそう思ったのだろう。
しかし**は苦い顔をした。

「出家をする当日、親から出家先の寺の地図を渡されて、そのまま地図の通りに来たらさ・・・そこは忍術学園だったんだよ」
「えぇ?なんで?」

驚いて数馬は思わず聞き返す。**は肩をすくめて感情の無い声で答えた。

「あいつらは出家なんて一文の得にもならないって思ったんだよ。それより俺を忍者にして、城勤めすれば、その方が儲かるんだ。俺の両親の考えそうな事だぜ」
「そんな・・・」

**は見ず知らずの場所で忍術学園以外にいく所はなかった。親の元に帰ってしまえばまたよからぬ所へ行かされるに違いない。色々考えた結果、**はひとまず忍術学園の生徒になることにしたのだ、

**は持っていた手裏剣を月の光に照らす。きらりとそれは反射した。

「俺は忍者になる気なんかないんだ。あんな親の企み通りになってたまるか」

吐き捨てるように言う**を見て、事情を知った数馬は腑に落ちない所があった。数馬は**の持つ手裏剣を指差す。

「じゃあなんで手裏剣の練習をしてるの?それに、普通なら君のような態度は減点されてとっくに三年生にはなれないと思うんだ」

数馬の指摘に**は黙りこむ。  

「それは・・・」
「それに手裏剣すごく上手じゃないか。勉強してるんじゃないの?」
「・・・・・・」

実は数馬の言った通りである。**は授業にこそ出なかったが自主勉強は毎日していたのだ。忍者になりたくないと言ったのに、何故忍術を勉強するのか。その矛盾した行動に数馬は疑問を持ったのだ。黙りっきりだった**は思いきって数馬に本当の気持ちを話す。

「一年の頃、一番はじめの実技を一度受けたんだ・・・」
「一番はじめの実技?」

それは忍び刀の持ち方、構え方だった。商家の息子だった**は刀を持ったこともなく、初めて握った刀が新鮮だった。そして実技教師が手本でうった手裏剣を見て、**はその姿に見とれてしまったのだ。

「そこで先生の実演をみて・・・尊敬した。忍術に興味が出たんだ」
「そうなの?じゃあそれから今までこっそり練習してたんだ?」
「・・・あぁ。俺は授業をサボるから、追試なんかを無理矢理受けさせられてたんだけど、ちゃんと俺が問題を解くから今までこうやって進級出来たんだ」

その話を聞いて数馬はぱっと顔を明るくする。

「すごいじゃないか!自分の力で進級してるってことだし!」
「すごい?俺が?」

数馬のすごいという言葉に**は戸惑った。自分はサボってばかりで、きっと学級のみんなには不評だろうと思っていただけに意外だった。

「もったいないよ。君みたいな人こそまわりの手本になるべきだよ」
「俺が手本?バカ言うなよ。嫌だ」
「**は忍術が好きなんだろ?じゃあ一緒に忍者目指そうよ」

数馬のまっすぐな眼差しに**はぎこちなく視線を外した。

「・・・それじゃ親の思惑通りだ」
「**!」

数馬の呼び掛けも無視して**は手に持っていた手裏剣を的にうつ。それはやはり綺麗に的の真ん中近くへと刺さった。

「じゃあな、数馬。つまんない話聞かせて悪かった」
「あ、待てよ・・・」

そのまま**は長屋へと戻ってしまった。一人残された数馬は、モヤモヤした気持ちを持ったままその背中姿を見ていた。

─そんな夜の事を思い出して、数馬は決心した。授業の最中だが、数馬は手を上げた。突然手を上げた数馬に教師がどうしたと聞いてくる。

「**を呼んできます」
「あいつを?数馬が?」

突然**を探すと言ってきた数馬にまわりの生徒は注目する。なぜ不良の忍たまを気遣うのか、わからないようだった。

「それは構わんが・・・あいつが来るとは思えんがな。私も何度も呼んだのだが」
「私がつれてきます」
「・・・わかった。そういうなら、呼んでこい。早めに戻れよ」

教師に許可を得て数馬はそのまま授業中の部屋を出ていった。教師は**の事を実は心配していたが彼がかたくなに嫌がるのを見て、話しかけるのをやめてしまっていた。それを同じ生徒の数馬が呼びにいくのを見て、どうなるか試してみたいと思ったのだ。出ていった数馬を見て教室はざわついたが直ぐに静かになった。

**は急ぎ足で忍たま長屋の**のいる部屋へと向かう。障子の前で声をかけたが、返事はない。そっと開けてみたが、姿はなかった。その後も校庭、図書室、食堂と探し回ったが見つからなかった。そろそろ授業が終わってしまうと焦った数馬。望みは薄いが、保健室にも念のために見てみようと部屋の前に立つと、医務室担当教師の新野の声がした。

(誰かいるのか?)

数馬は長屋と同じように障子の前で声をかける。すると新野の声が返ってきた。障子を開けるとそこには薬草を広げた新野と、その向かいに座り薬草の種類と効能がかかれた紙を持つ**の姿。

「あ!こんなところにいたのか?」
「あぁ、あんたはたしか!・・・誰だっけ」

数馬は思い切りずっこけた。

「だから!三年は組の三反田数馬!君と同じ学級の!」
「おぉ、数馬。どうしたんだ?今は授業中だろ?授業はどうした?」
「君が言うかなぁ」

授業をサボっている真っ最中**に言われても困る。けろりと笑顔を見せる**の姿を数馬は見ていた。医務員の新野が、薬草を**に見せているようだった。

「薬草の勉強?」
「あ、まぁ・・・」

**はあまり見られたくない姿を見られてしまいばつが悪そうだ。それをみた新野が説明する。新野は彼が授業をふけていることは知っていたが、彼の気持ちを黙って受け入れているようだった。

「彼は薬草の事を知りたいって言うから、教えていたんですよ。忍者にとって薬草の知識は役に立ちますからね」
「へぇ・・・やっぱり勉強してたんだ」

数馬が感心していると**は照れを隠すようにそっぽむいた。

「ったく。で、数馬はなにしに来たの。・・・あっ、俺とおんなじサボりとか?」
「なにいってんだよ。君を探してたんだ」

数馬が自分を探していたと聞いて**はきょとんとした。

「俺を?なんで?」
「当然だろ?今は授業中だよ?」
「前の話を聞いた?俺は忍者になりたくないの」

やはり頑なに授業を受けようとしない**。数馬はむっとして**の腕を掴んだ。

「君は忍者になるべきだ。むしろ、なりたいんじゃないのか?」
「・・・」

黙っている**に、さらに数馬は熱が入る。

「これは君の両親の話じゃない。**が、忍者になりたいか、なりたくないか、僕はそれが聞きたいんだ」
「そ、れは・・・」

**が顔を上げる。迷いのこもった瞳が数馬とぶつかった。忍術の学ぶ学校にいながら今までこっそり忍術の勉強をしてきた**。そんな彼が不良だの、ましてや進学が無理だのと言われているのを見て数馬は黙っておけないのだ。

「俺は・・・、忍術が好きだ。先生のように、なりたい」
「じゃぁ、一緒に授業を受けようよ!」
「それで、いいのかな・・・俺は親のようになりたくないんだ」

不安を吐露する**を見た新野が優しい微笑みで答える。

「あなたは、「両親」ではありませんよ。**君が忍術を学びたいなら、それは誰のためでもない、君だけの気持ちなんですよ」
「新野先生」

**は少し考える。そして新野、数馬の顔を見て、頷いた。

「わかったよ。俺、授業に出る」
「ほんと!やったぁ」

答えを聞いた数馬が両手を上げて喜ぶ。自分が授業を受けたいと言っただけでなぜ数馬が喜ぶのだろうか?数馬は**の会ったことの無いタイプの人柄であった。

新野に挨拶をして二人は三年は組の部屋へと戻る。数馬が戸を開けると二人して戻ってきた姿を学級が見て驚いていた。

「数馬、**、まさか本当につれてくるとは・・・」
「先生、抜け出してすみませんでした。授業を受けさせてください」

数馬がそう言う。しかし・・・

カーン

その瞬間、授業の終わりを告げる鐘が鳴った。お互い戸惑った顔を見せていると学級の皆が笑った。

「間、悪すぎだな?」

教師が一言言って微笑む。

「今日の授業は終わりだ。**、明日からは授業、受けろよ」
「は、はい!」

憧れの教師は実はこの教師の事だった。**はとっさに答えて背筋を伸ばす。教師はすれ違い様に数馬の肩に手をやった。そのまま黙って教師が教室を出ていく。

授業を終えた三年は組は賑やかになりそれぞれ、勉強、夕食や風呂へ行く者達がバラバラに動く。

「ごめん、僕普段不運なんて言われてるからさ・・・間が悪いのは僕のせいかも・・・」
「なんだそれ」

二人して笑い合う。**は忍術学園三年目にして、初めて心から笑い合う友達ができたのだった。



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