おにぎり噺
生存確認用。おにぎりの噺はしません
おにぎり根多帳2019/07/28 21:56
仙蔵と剣士
男主=あなた=**
書こうと思って没になった連載の話です。途中で終わります
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「十六夜月城同盟国パーティー」
城門の前にでかでかと吊るされたのぼりを彼はじっと見つめる。六年い組、立花仙蔵は六年生の中でも腕のたつ忍たまだ。その腕前を見込まれ、先日学園長命令でこの十六夜月城の同盟国パーティーにやって来たのだ。しかし、彼がこのパーティーにやって来たのは決してお祭りを楽しみに来たわけではない。
(この祭りで、忍びとして十六夜月城を警備するのが、私の使命・・・)
仙蔵は静かに拳を握る。学園長から仰せつかったこの使命を必ず完遂するつもりだ。今日一日十六夜月城にやってくるくせ者を一人残らず追い出して見せると、落ち着いた表情とは裏腹に仙蔵は熱い気持ちで自分を奮い立たせた。
「そちら、どちらのものですか?」
門番に訪ねられて仙蔵は来る前に学園長に渡された文を渡す。それに目を通した門番は、文を返しうなずいた。
「お話は聞いております。これを奥の者へとお渡しください。護衛がご案内いたしますので」
「わかりました」
門を抜けて御殿の中へはいると刀をさげた兵士がやって来た。仙蔵はかるく会釈して手紙を見せると、殿様の所へ案内すると歩き始めた。仙蔵もその後ろへ着いていく。向かった先は天守閣。そこで十六夜月城の殿様は集まってくるは人々を見ていた。仙蔵は頭を垂れて膝まずいた。
「忍術学園から参りました。六年い組の立花仙蔵です」
「おお・・・君が大川様がおっしゃっていた護衛の者ですか。顔をおあげください」
殿様らしからぬ腰の低さに仙蔵は戸惑いつつ恐る恐る顔をあげた。仙蔵が見た十六夜月城の城主はいかつい身体だがどこか優しげな眼差しが印象的だった。
「立花くん。我が十六夜月城はまだまだ発展途上の城だ。我らの情報欲しさに潜入する者も必ず現れるでしょう。君には・・・」
「私には・・・?」
きっと怪しい侵入者を調査するのだろうと仙蔵が顔を険しくさせた。忍を志す自分としては十分やりがいがある、そう思ったのだが・・・
「酔っぱらいの介抱とかしてもらいたいなぁ」
「へ!?」
仙蔵は思わずすっとんきょうな声が出てしまう。今の流れでなぜそうなるのだ?仙蔵は内心戸惑った。
あっけに取られている仙蔵の様子に照れたように十六夜月城の城主は笑う。
「いやぁ、十六夜月城はまだまだ人が足らんくてね、私は同盟国の使者との顔合わせで忙しいし、兵士は護衛を配備するだけで手一杯なのだよ。出店で救護班とか、酔っぱらいの介抱とか、あ、喧嘩とかも起きたら心配だからお願いしたい」
「な、な・・・」
「救護班にはバイトのおばちゃんもいますから!」
いますから!ではない。別にバイトのおばちゃんがいるかいないかなど仙蔵には決め手にならない。彼は心では思い切りずっこけていた。まさか、自分が呼ばれた理由がこんな気の抜けたものだったなんて。他の六年には絶対言えないなと仙蔵は心の中でため息をつく。
「承知しました」
「ありがとうございます。いやぁ、本当に助かる。では案内の者に本部まで案内させよう」
仙蔵は立ち上がる。なんにせよ学園長からの任務、そして城主からの直々のお願いなのだ。どんな任務であろうとやりとげなければ立派な忍者にはなれない。
案内の者に外の本部まで案内してもらう。ここは武芸の練習場にもなる広い場所だ。至るところで出店が出ている。ヨーヨーすくい、たこ焼き屋、田楽豆腐・・・完全に夏祭りだ。
そのなかに一つの陣ができており、立て札に「本部」と墨でかかれている。藁でできた敷物、むしろを広く敷き、ちょこんと長机がおかれている。そこに中年の男女がならんで座っていた。二人は仙蔵をみてにっこりと笑った。
「十六夜月城の城主様に本部の手伝いを命じられました。立花ともうします」
「おお、待っていましたよ。係りの者から若い子が手を貸してくれると聞いていましたから」
「かっこいいわねえ」
仙蔵は人当たりのよい笑顔を浮かべ、お辞儀する。そして長机の空いている隣に座ろうとしたときだった。
「大変だ!御殿の裏で人が斬られた」
兵士の言葉に本部はざわつく。斬られた、恐らくくせ者がこの城のだれかに攻撃したのだ。仙蔵はすぐさま考えた。その斬った人物とは何者なのか、なにが目的で忍び込んだのか・・・。仙蔵は本部にいる二人に声をかけた。
「私は斬られた者を本部に運んで参ります。できればお二人は手当ての準備を・・・」
「ああ、わかっている。そのつもりだ。頼んだよ立花くん」
各自それぞれの準備に入る。仙蔵は兵士の後について行き、急いで御殿の建つ裏へと回った。そこは天守閣に繋がる高い石垣に囲まれており、行き止まりになっていた。仙蔵はうずくまっている兵士の男と、刀を構えた男が対峙している姿をみて身構えた。刀を構えた男がとっさに振り向く。
「あぁ、君たち!この人をはやく助けてあげて!」
男は仙蔵と同い年か、少し下に見えた。腰に刀の鞘と、脇差ぐらいの長さの杖をかけている。どうやら剣士のようだが、その人の良さそうな顔に仙蔵は戸惑った。しかし共に来た兵はその剣士に槍を向けた。
「貴様、くせ者が十六夜月城で一人で来るなど・・・!我が兵を襲うとは、ゆるせん」
「ええ!襲うって・・・まってください。私は斬っていません!!」
「ええい、嘘を言うな!捕らえる!」
剣士は向けてきた槍に後ずさる。しかし相手に抵抗する様子はない。あっというまに剣士は綱で繋がれてしまった。仙蔵は斬られた兵士の様子を見る。兵士は太刀を持っていたが、手首に血を流していた。血は流れているものの、負手はおっていないようだ。仙蔵は手拭いで応急処置をして男の肩に手をかけた。
「本部へいきましょう」
そうして本部で仙蔵は怪我をした男の手当てを中年の二人に任す。そして一緒に連行された相手を斬ったであろう剣士の様子をもう一度観察した。その男は袴姿だが、薄汚れた服を着ている。髷も手入れが出来ていないようでいってみれば”優男風の野侍”とでもいうべきか。男は兵士に睨まれてたじたじとしている。
「お前、何者だ!?」
「うう。僕はこの祭りに来た一般客ですってば!」
男が怯えながら答えるが、兵士はその言葉を信じない。
「なにを言っておる!我が兵士を斬っておいてなにが一般客だ」
「斬ってません!ただ、あの人を斬った相手と戦おうと思ったらやつは石垣を軽々と登っていったんです」
「嘘つけ。あの絶壁をだれがやすやすと上れると思うか?」
「信じてくださいー!あっ、ほら君もなんとか言ってよ」
仙蔵は男に懇願するように見た。仙蔵は今一度男の姿を見る。どうも殺気は感じないし、むしろ気が抜けるほどだ。もう少し確かめる必要があると仙蔵は手を差し伸べ男に言った。
「太刀を見せてくれ」
「へ?いいけど」
仙蔵は男の腰に差された刀を抜き取り、鞘を抜く。その刀の光は鈍く、着目すべきは刃の方だ。まじまじと見て、仙蔵は首を傾げた。
「おい、これ、切れるのか?」
仙蔵の言葉に男ははにかんだ。そして照れたように言った。
「よくわかったね。君の察しの通りその刀は切れない」
「なんだって?」
兵士もその刀を見る。試しに兵士は刃に指をそっと触れてみたが、怪我どころか薄皮一枚も切れなかった。
「なまくら刀だな?」
「なまくらのほうがまだ切れる」
仙蔵と兵士は呆れたようにその武士を見た。
「それは僕の愛刀なんだ。っていっても豆腐もうまくきれないんだけどね」
「もはやおもちゃだな」
仙蔵は刀をおさめて剣士をみた。この剣士の言うとおり、彼があの兵士を切ったという可能性は低そうだ。しかし、と槍を構えた兵士は言う。
「へっぽこのお前が囮で、その石垣をのぼった男と仲間なのかもしれん」
「ええー!まだそんなこというのぉ?」
男はまだ疑いが晴れないことにガッカリしていた。
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