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「友達・・・?とにかく頭をあげてください・・・」

なのかがそういって竹谷は頭をあげる。なぜ孫兵の友達に自分がなってほしいのか、なのかがそう聞くと彼はちょんちょんとそばにある腰をかけるにちょうどよい岩をつついた。どうやら座れということらしい。なのかはかごを下ろしその大きな岩に腰かけると、竹谷もなのかの隣に腰かけた。そしてなぜ彼がそんなことを彼女に頼むのかをポツリと語り始めた。

「孫兵をみて、なのかさんどう思った?」
「・・・浮き世離れしてると思いました。毒蛇と山で暮らしてるって聞いて」
「そうか・・・」

なのかは思ったことを素直に答えると竹谷はうなずく。

「あいつは、孫兵は元々は城の、えぇっと・・・城の兵士だったんだ。そこでも毒蛇とかと常に一緒で、まわりから嫌がられてたんだ。いつも蛇が脱走しては城を恐怖に陥れてたな・・・」
「城をまもる兵士なのにですか・・・」
「あぁ。それでついに孫兵は殿様に言われて城から追い出されてしまった。それから孫兵の様子は変わってしまったんだ。なんていうか、人を避けるようになったっていうか・・・」

なのかは彼と出会ったさきほどのことを思い出す。確かに孫兵は自分をみるなり嫌そうな顔をしていた。そして山のなかに暮らしており町にいくのもいやがっていた様子からして竹谷のいうとおり孫兵は人を避けているのだろう。

「学園にいたころはまだ軟らかかったんだけどな。今は同級生もよりつかせないぐらいだ。このままじゃあいつ・・・いつか孤独になってしまうと思う。孫兵には人を嫌いになってほしくないんだ。だからあいつの友達になってやってくれ!君しかいないんだ!」

竹谷は再び頭を下げる。彼から感じた人を寄せ付けぬ雰囲気の理由がなんとなくわかった。かといって自分なんかが孫兵の友達などになれるのだろうか。学校の同級生にすら会わないぐらいだというのに。

「私は孫兵さんと友達になりたいけど、孫兵さんはそうじゃないかもですし・・・」

何気なくはなったなのかの言葉に竹谷は笑顔を見せる。彼の笑顔は太陽のように明るいとなのかは思った。

「そんなことないって!あいつが俺以外の人と話すなんてここ最近なかったんだ。山に来るやつがいてもみんなしらんぷりさ。きっと君には孫兵が許してしまうような雰囲気があるんだとおもう!」
「そ、そうでしょうか・・・とりあえず、明日会いに行きます。彼が望むならまた薬を売りにいきますし、竹谷さんのお願いも考えつつ、仲良くできたらいいなぁ・・・って思います」

なのかは孫兵のことが嫌いではなかった。彼とははじめてあったばかりだが、不思議と馴染んでしまう感覚があった。もう一度孫兵の瞳を思い出す。蛇をいとおしげに見つめる彼の眼差しはとても愛情深かった。きっと悪い人ではないのだと思う。竹谷はなのかの言葉を聞いて微笑んだ。

「ありがとう。君がいい人でよかった。俺もたまに様子を見に行くから」
「竹谷さんは孫兵さんとどんな関係なんですか?」
「あぁ、俺は孫兵の学園の先輩だ。昔からあいつの世話してたもんだからな。孫兵も俺には接してくれるんだ」

なのかは先程の竹谷と孫兵の姿を思い浮かべる。蛇の扱いからして彼も孫兵と同じ感覚をもつ人なのだろう。きっとそれが孫兵にはわかるから竹谷に心を許しているのだろうと思った。

「話はそんな感じだ。足止めしてわるかったな。ここをでれば街道にでる。いこう」

竹谷が岩からおりる。なのかも荷物をもち降りて竹谷のあとへついていくと森をぬけて見慣れた道へとでることができた。ここまでくれば帰り道はわかる。なのかは竹谷にお礼をいうと彼はこれから仕事があるといってなのかとは反対側の道へと去っていった。残されたなのかはさっそく家に向かい事情を話した。虫刺されの薬がほしいと聞けば両親はすぐに薬を用意してくれた。そして母にどこまで届けにいくのかと聞かれてなのかは答えると、母は血相を変えた。

「あの奥の山にすんでる男に売るの?」
「お母さん、知ってるの?」
「しってるもなにも、このあたりじゃ噂よ。あそこは毒虫屋敷なんていわれているの。不気味な男がでてきて大蛇を操って食べてしまうとか・・・」

それじゃあ化け物使いだとなのかは苦笑いする。今日会ってきた彼はそんな風には見えない。きっと孫兵が人を寄り付かせないために広めた噂か、まわりにまわって話が誇張されてしまったのだろう。母はなのかが山へいくのをあまり賛成しない様子であったが、なのかは孫兵はそんなに悪い人物でないことはしっているので、なんども言い聞かせてやっと薬を渡してくれたのだった。

「あぶなかったらすぐ逃げるのよ!」
「大丈夫だって・・・」

なのかは荷物いれにいくつかの薬をいれる。孫兵は虫刺されの薬がほしいといっていたが他にも日常で使える毒消しなども持っていこうと思った。詰め込みながら考えたのは孫兵のこと。たしか竹谷は孫兵の友達になってほしいと頼んできた。自分は彼のことが気になるが孫兵はどうなのだろう?生き物を愛し人を避けるほどの者だ。自分のような平凡な者なんかが友達になれるのだろうか?なのかは疑問であった。


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