山田利吉×土井半助 Unofficial Fan fiction
◯星月夜
「お兄ちゃん!あの星はなんですか?」
満天の星夜の下、毛布にくるまった利吉は一際明るい星を指さした。
「あの大きな星かい?あれは青星または大星という星だよ」
同じく毛布にくるまった半助も指さすと、その星の名を告げた。
「見たままの名前ですね!たしかに青色で、この星々の中で1番大きいです!」
「そうだね!青星は全天の中でも一際青く輝く、1番大きな星なんだよ」
「へー!!」
「利吉くんは星が好きかい?」
「はい!キラキラしていて、とても綺麗です!」
そう楽しげに空を見上げる利吉の瞳は、星明かりをめいいっぱいに反射してきらきらと煌めいた。
「お兄ちゃん!あの赤い星はなんですか?」
「…」
黙ったままの半助に利吉はこてんと首を傾げれば、半助はボーと利吉の顔を見つめていた。
「お兄ちゃん?」
「ああ、ごめん」
「私の顔に何かついていますか?」
自分を不思議そうに見つめる瞳の中にもたくさんの星々が瞬いて、半助は目を細めた。
「私の青星を見ていたんだ!」
「お兄ちゃんの青星?」
「ふふっ!利吉くんのことだよ」
煌めく瞳の、その甘やかな体温をぎゅっと毛布ごと抱きしめれば、笑顔を輝かせて小さな手が嬉しそうに半助の腕を抱いた。
「私がお兄ちゃんの青星ですか?!」
「利吉くんはいつも一生懸命にキラキラと輝いていて、私の青星だよ」
腕にすっぽりと収まった利吉の桃色の頬をもちもちとつつけば、辺りにきゃっきゃっと可愛らしい声が響いた。
「あ!夜這い星!」
そのとき、もう一度利吉が空を指さして半助は思わず咽せた。
「ゴホッッ!ゲホッゴホッ」
「お兄ちゃん?大丈夫ですか?」
「ごめんっ、ちょっとびっくりして…」
「前に読んだご本に、流れる星をそう書いてありました!」
「利吉くんは本当に勉強熱心だね…」
「でも、夜這い星は人々から忌み嫌われている星とも書いてありました」
「ああ、星が流れると魂が神に召されるや、この世が終わるとも記されているものね」
「はい…だけど」
空を見上げた利吉の瞳の中に、また一つ星が流れた。
「こんなにも綺麗なのだから悪いものではない、と私は思うのです」
「うん!そうだね。私もそう思う!」
利吉と同じように空を見上げるともう一つ、半助の瞳の中にも星が流れた。
「流れる星のことを遊びに来る星と書いて、遊来星という呼ぶこともあるんだよ。もしかしたら今流れた星たちは利吉くんのところへ遊びに来たのかもしれないね!」
「それとってもステキです!私、前々から星を捕まえてみたいなと思っていたんです!」
「星を捕まえるのかい?」
「はい!こうやって!」
利吉が戯けて星をキャッチする動きをすれば、半助はクスクスと笑った。
「いつか星を捕まえられるといいね!」
「はい!そうしたら真っ先にお兄ちゃんに見せますね!」
「わあ!それは楽しみだなぁ!」
「あ…」
ころりと表情を変えた利吉に今度は半助が首を傾げると、半助の腕を抱く小さな手に力がこもった。
「もし私が星を捕まえたとしても、もう、すぐにはお兄ちゃんに見せられなくなりますね…」
半助は明日、この家を出て忍術学園へ行く。寂しげに俯いてしまった利吉を、半助はもう一度ぎゅっと抱きしめた。
「いつでも見せにおいでよ。私はずっと利吉くんのことを待っているよ」
「でも、私も外の師を求めてここを出る予定です。見つけた師が遠い地にいたならば、私も気軽にはここに戻って来れなくなってしまいます」
「そうしたら、私が利吉くんに会いに行くよ 」
「ここよりもっと深い山奥や、離れた孤島かもしれませんよ?」
「それでも会いに行くよ!利吉くんは私の青星なんだから、どこにいたって必ず見つけるよ!」
優しくて力強い声に導かれるように利吉が顔を上げれば、半助の満面の笑顔が照らして、利吉の顔にもたちまちきらきらと笑顔が戻った。
「うん!」
ーだからどうかいつまでも、君はなによりも輝いていておくれ
半助は願いを込めてもう一度空を見上げれば、二つの流れ星が仲良く空の彼方へ旅立っていった。
続き