山田利吉×土井半助 Unofficial Fan fiction


◯檸檬の花の蜜


「こんにちは〜!」

利吉が職員室に顔を出すと、机に向かっていた半助が顔を上げた。

「利吉くん、いらっしゃい!だけど山田先生なら先程出て行かれたよ…」

「いえ!今日は土井先生に会いに来ました!」

「え?私に?」

「はい!」

不思議そうに首を傾げる半助の前に腰を下ろすと、利吉は懐から昨日手に入れたばかりのある物を取り出した。

「これを手に入れまして」

取り出したそれは、白いふわふわしたものが付いている耳かき。

「なんだい?それは…耳かきのようだけど」

「はい、耳かきです」

利吉が差し出した耳かきを手に取ると、半助はさっそくその上に付いている白いふわふわ、所謂梵天を物珍しいそうにつんつんとつついた。

「たんぽぽの綿毛みたいだね」

ふわふわしてる〜と言いながら梵天に触れる姿がなんとも愛らしい、楽しそうな半助のニコニコ笑顔は辺り一面に花が咲くみたいだ。

「実は先の忍務で耳のマッサージ術を習得したので、ぜひ土井先生にして差し上げたいなと思いまして!」

「利吉くんのマッサージは気持ちいいから嬉しいけど、耳かぁ…」

「お嫌ですか?」

「嫌じゃないけど、最近耳掃除を怠っていたから汚いかも…」

「なら、ちょうど良いじゃないですか!」

「いやあ、恥ずかしいし…」

「私も幼い頃によく土井先生に耳掃除をしていただいたじゃないですか!」

「そうだったけど…」

「だから私もぜひ土井先生にして差し上げたいんです。確か土井先生は今日の午後は休暇でしたよね!」

「そうだったんだけど、実はこれから山田先生に手紙を届けてくるように頼まれちゃって」

「なに?!休暇の土井先生に使いを頼むなんて!!まったく父上は!!私が今から自分で届けるようにと父に言ってきます!」

「山田先生はこれから、6年生の野外授業に同行する予定でどうしても外せないんだ!」

「…それなら仕方ないですね。でも急ぎではないんですよね?」

「本日中とのことだけど…」

「だったら、私が後で届けに行きます」

「え?いいのかい?」

「はい。せっかくの休暇なんですから土井先生はゆっくり休まれて下さい」

「ありがとう、利吉くん」

「ささ、まずは耳のマッサージをしましょう!」

利吉がうきうきしながら自分の膝をポンポン叩いてみせると、半助は眉を下げつつも大人しく利吉の膝に頭をのせて、ごろんと横になった。

「男の膝で恐縮ですが、楽になさって下さいね」

利吉が再び懐に手を入れると、ころんと丸い小瓶を取り出した。

「それは?」

もったりとした淡黄色の液体が注がれたそれを半助がじっと見つめていると、利吉はぱかりと蓋を開けて半助の鼻に近づけた。

「わあ!すごく爽やかな香りだね!何かの果物かい?」

「はい。これは檸檬という果物の花の蜜で作られた精油です。今からこれを耳かきに少量つけて耳の経穴を刺激していきます」

「耳にも経穴があるんだね」

「南蛮に古くから伝わるマッサージ術だそうで、耳の経穴を刺激すると身体の不調が改善されるのだとか」

「ああ、足裏にも同じような経穴療法があったね」

「はい。それの耳バージョンです」

さっそく始めようと利吉は意気揚々と耳かきを構えたが、触れた半助の耳たぶがあまりに硬くて驚いた。

(土井先生、よっぽどお疲れなんだな…)

利吉は眉を顰めると耳かきを一度置いて、ガチガチに冷え固まっている半助の耳を両手で包み込んだ。

先ほどから耳たぶが縦横無尽に揉まれている。半助はふと、利吉と仲良くなったばかりの頃を思い出した。一つの布団に二人で一緒に横になると、まだ幼かった利吉がよく半助の耳たぶに触れてきた。小さな手の感触がこそばゆかったが、耳たぶをもにもにと触りながら幸せそうに目をとろんとさせている利吉が可愛くて、半助はされるがままにその愛しい感覚に夜な夜な身を任せていた。

(利吉くん、今も耳たぶ触るの好きなのかなぁ…)

耳たぶを揉まれる感触が懐かしい。もにもにと変わらない愛おしさに半助がしみじみ浸っていると、ぐいっと耳介が引っ張られた。と思いきや、今度はぱたりと耳介が折り畳まれる。何をしているんだろうと不思議に思ったが、一連の行為を何度か繰り返されているうちに段々と身体がぽかぽかしてきて気持ちが良い。

(耳を触れるのって気持ちが良いんだなぁ。それとも利吉くんに触れられているから気持ちが良いのかな…)

半助がほんのりと頬を桜色に染めるとほわほわと甘酸っぱい香りが辺りを包んだ。

(どんなマッサージをしてくれるのだろう)

半助がわくわくしていると、不意にピリリと痛みが走った。

「痛っ!!」

「あれ?痛かったですか?」

利吉がもう一度その場所を耳かきで軽く押すと、夢心地だった半助の体にグッと力が入った。

「痛いっ!」

「ここは眼精といって目がお疲れだと痛む経穴だそうですよ」

「最近ずっと期末テストの採点をしていたからかなぁ…っう!」

「そんなに痛むのならあまり刺激するのはやめておきましょう。今日はゆっくり眠って目を休めて下さいね」

「うう、ありがとう…」

「ここはどうですか?」

「そこも痛いっ!」

「ここは肩の経穴です」

利吉の空いている手がふわっと半助の肩に伸びた。

「ああ、ほんとだ。肩も随分と凝っていらっしゃる。後で肩もマッサージしますね」

経験はなかったが、足裏の経穴療法は痛いと聞いたことがある。時々してもらう肩や腰のマッサージは、利吉の巧みな指遣いと耳当たりの良い声音に恍惚としてぐずぐずに解かされるのだが、今日は…

(痛いやつかもしれない…)

半助は身構えると、次は存外心地の良いところを押された。

「ここはどうですか?」

「あ、そこは痛くないよ」

「ふむ、腰は大丈夫みたいですね。ではこっちはどうです?」

「そこは少し痛いけど、我慢できるくらいだよ」

「ここは肝臓の経穴です。痛むのでしたら少し肝臓に負担がかかっているのかも。最近お酒は飲まれました?」

「昨夜は先生たちと慰労会だったから、あれよあれよと飲まされてしまって」

「なるほど、それで飲みすぎたと」

「まあ付き合いで…」

「楽しむのは良いですが、あまり羽目を外しすぎないで下さいよ」

「いやあ、かたじけない…」

「でも、そこまで痛くないのでしたらここはもう少し刺激しておきますね」

「ありがとう」

ゆっくり圧が加わえられるそこは、確かに少し痛い。だけど気持ち良さも感じられて痛気持ち良いというやつだ。半助は身体の力をふぅと抜いた。

「場所を変えますね。ここはどうです?」

「気持ちが良いよ」

「腎臓は問題なさそうですね。ではここは?」

「そこも気持ちが良いよ」

「摂護腺も問題なしっと」

「え?摂護腺?!」

「それじゃあここは?」

「そこも気持ちが良いけども…」

「うん、魔羅も問題ないみたいですね」

「まっ?!」

「ここは?」

「あっ、そこ痛い!」

「ここは問題がありそうですね」

「そ、そこはなんの経穴だい…?」

「ここは腸です」

「っ、なんか利吉くんに私の身体の中をあちこち知られるみたいで恥ずかしいんだけどもっ…」

「はい!土井先生のことならなんでも知りたいので」

羽目を外し始めた利吉に抗議しようと顔を上げると、屈託のない満面の笑顔を返されて、半助は香りと同じ甘酸っぱい気持ちになった。

(今度利吉くんにも同じことしてやるっ!)

そう心に決めてグッと拳を握り込むと、突然ものすごい激痛が脳幹を貫いた。

「っい!!」

半助が耳を抑えて蹲ると、利吉は頬を掻きながら苦笑した。

「あ、やっぱりそこ痛みました?」

「やっぱりって…」

「そこは胃の経穴です…」

「っ!私が胃を痛めていることは利吉くん知ってるじゃない〜!!」

「すみません、一応そこも刺激しておこうと思いまして」

「も〜!!」

「でも土井先生の反応を見る限り、この耳経穴マッサージは結構効き目がありそうですね」

「痛いのは嫌なんだけど…」

「わかりました。ならもうしません」

いまだにジンジンと痛む耳を抑えて涙ぐむと、熱くなった目頭を利吉の指がそっと拭った。

「ああ、こんなに瞳を潤ませて…よっぽど痛かったんですね」

利吉の細められた眼差しが甘やかに光を放つ。

「では、その分うんと気持ち良くなっていただかないと」

その面映さから半助は目を逸らすと、あの頃よりも大きくなった手が半助の朱く染まった耳を撫ぜた。

「それじゃあ今度は耳掃除をしていきますから、力を抜いて下さい」

もにもにと再び耳たぶを揉まれて、否が応でも力が抜かれていく。利吉の膝に縫いつけられれば、耳かきの細い匙がこしょこしょと半助の耳門をなぞった。

耳かきが少しずつ少しずつ耳孔に埋め込まれていく。

(そういえば耳掃除を誰かにしてもらうのっていつぶりだろう)

記憶をいくら辿っても思い出せないそれはきっと、どこかに置いてきた思い出の中だろう。

「ごめんね、耳の中汚いだろう?」

「いや、そうでもありませんよ」

さりさりと音を奏でながら細い匙が外耳道を進む。軟骨の近くをこしこしと優しくこすられれば、痒いところを的確に掻かれているような気分になり心地好い。内側の柔いところを丁寧になぞられれば、ぞくぞくとした快感が背筋を走った。

(耳掃除ってこんなに気持ちの良いものだったっけ)

「っ…」

思わず声が出そうになって、半助は慌てて口を抑えた。まだ幼かった頃の利吉に耳掃除をしたとき、こんなにも気持ち良さそうにしていただろうか。今は時々きり丸にしてやるが、彼の子はいつもあっけらかんとしている。

(利吉くんは指先が器用だからな)

それとも…

そのとき少し強めに匙が滑って、堪えきれなかった声が漏れた。

「あっ」

「痛かったですか?」

「いや、大丈夫。ごめんね…」

気持ち良すぎて、なんて言えない。この身が持ちそうにないから早く終わって欲しい。だけどこの至福な時間がいつまでも続いて欲しい。我ながら強欲な己に半助は口をぎゅっと引き結んだ。

その後もそこかしこを丹念に掻かれ続ける。浅いところはこしょこしょとくすぐるように、深いところはカリカリと痛みを感じない程度に強く。まるで丁寧に隈なくその秘宝を愛撫するかのように。

「くっ…ぅ…」

利吉の緩急をつけた絶妙な匙捌きに半助はただただ身悶えた。どうにかこの快感を逃したくて半助が足をもじもじと擦り合わせると、ふふっと笑う声が聞こえた。

「声、我慢しなくてもいいですよ」

「っ、だって…気持ち悪いだろ?」

「全然、善がってもらえて私は嬉しいです」

「っ…!」

恥ずかしすぎてもう言葉にもならない。火を噴きそうなほど熱る半助に、落ち着いた声が名前を呼んだ。

「土井先生」

「な、なに?」

「奥に異物が見えるのですが、もう少しだけ深く匙を入れてもいいですか?」

耳の奥、鼓膜は急所の一つだ。半助は少しだけ迷った。

「やめておきますか?」

「いや、でも利吉くんになら…」

「はい。貴方のことを絶対に傷つけたりしません」

(なんとまあ力の強い瞳)

「私を信じて下さい」

思わず吸い込まれてしまいそうな眩いばかりの利吉の瞳に半助は何度だって心を奪われる。

「お願いするよ」

「ありがとうございます」

温かな優しさを宿す手が、半助の頭をそっと抑えた。勝手に押し進めるのではなく、奥に踏み込む前にきちんと顔色を伺ってくれる。今も昔も変わらずに慕ってくれる利吉からの愛に心ごと癒されて、半助はゆっくりと瞼を閉じた。

膝に預かる体温が心底愛おしい。先程よりもずっしり感じるその重みに利吉は静かにほくそ笑んだ。

かりこりという音と、匙が与える刺激が脳にダイレクトに響く。鼓膜に近いところだから、より慎重に匙を滑らせる…かと思いきや俄かにガリっと強めに掻かれて、不意を突かれた半助の声が零れた。

「ぅあっ…」

ピリピリとした痛みが背筋を駆けるがそれすらもどうしようもなく気持ち良い。与え続けられる快楽に涙ぐみながら耐えていると、パリっと音がしてジワジワとした痒みが半助の身体を蝕んだ。

(痒いっ)

痒さから逃れるために、身体を動かしたいが下手に動いたら自ら鼓膜を傷つけかねない。これは、人質ならぬ耳質かといつかの良い子のような言葉が頭に浮かんだ。利吉に全てを委ねた半助は、彼がその場所を掻いてくれるまで待つしかない。

「ひっ…」

だが匙は瘙痒とは反対の場所をカリカリと掻いている。

「りっ利吉くんっ」

「どうしました?痛いですか?」

「痛くはないっ…けどその、痒くて…」

「どこが痒いんです?」

「さっき何かが剥がれたような音がしたところが」

「ここですか?」

「違う、もう少し下」

「この辺りですか?」

「う〜ん、もう少し左」

先ほどまでとは違い、浅いところをすりすりと撫でられて、なかなか解消されない痒みがうずうずともどかしい。我慢できずに半助が声を出してしまいそうになったとき、スッと利吉の人差し指が半助の口元に添えられた。

「ここですよね?」

いつもより顰められた声が霧がかった脳内にハテナマークを浮かべると、耳かきの匙が、垢が剥がれたばかりのその甘皮をそっとつついた。

「っあァ」

待ち焦がれた刺激は幾十にも甘さを含ませて身体中をびりびりと痺れさす。そこそこ〜と言う、おっさん言葉だけは封印したが、焦らされた痒みはつつくだけの刺激じゃもの足りない。

「もう少し強く掻いて欲しいのだけど…」

と懇願してみれば、利吉はニっと口角をあげて

「今日は随分と注文が多いですね」

と、生意気な言葉を吐く。 

「ごめん…」

怒らせてしまったかと顔を上げれば、いつものニコニコと安心する利吉の笑顔にホッとしたが、

「約束したばかりでしょ」

「え?」

「貴方のことを絶対に傷つけないって」

その笑顔の裏に渦巻く何かを見た気がして半助は目を白黒とさせた。

「これを握っていて下さい」

スッと利吉が差し出したのは、利吉の服の裾。え?ともう一度半助が利吉の顔を覗くと

「手をずっと握り込んでいらっしゃる。そんなに握ったら貴方の手のひらが傷ついてしまいますよ」

そう言って微笑む利吉はやはりいつもの利吉だ。だけど一度鳴り始めた鼓動は鳴り止まないまま

「さあ、耳掃除を再開しますよ」

半助が大人しく利吉に従えば、今度は焦らされることなく耳かきの匙がそこをこりこりと掻いて、そのあまりの気持ち良さに半助の思考はそこで止められてしまった。

「ん…あっ…はぁ…んッ」

奥を掻かれるたびにパリパリと音をたてて、新たな痒みの根源が生み出される。半助は声を我慢するのも忘れて、襲い来る酸いと甘いにひたすら翻弄され続けた。何度目かの酸いののち、ひときわ大きな音がして耳孔から匙が抜き取られた。

「見て下さい!すごい大きいのがとれました!」

なにやら利吉が楽しい声をあげるが、半助はそれどころじゃなかった。垢がごっそりと取れて久方ぶりに空気に触れたところが、今までとは比べ物にならないくらいの猛烈な痒みを纏って、耳の奥で暴れまくっている。自然と足の指先にまで力が入ると、半助は体を縮こませてぎゅぅぅと全力で体中を力ませた。

「んぅぅ!!」

「お任せを」

その一言と共にゆっくりゆっくり、余計な刺激を与えないように耳孔の中に耳かきが埋められていく。奥に触れる前に利吉が匙を一度とめて、半助はごくりと唾を飲み込んだ。

匙がそっと瘙痒に触れて、こしこしとそこを強く掻く。

「んあッ」

その瞬間、半助の力んでいた身体が一気に弛緩した。思わず脳が蕩けたかと思うほどには気持ちが良かった。ここが桃源郷か。あまりの快楽に惚けながらはふはふと息をしていると、ほわほわしたものが快楽の余韻が残る穴を撫ぜた。

「最後はこの綿毛で、細かなほこりを払っていきますね」

さわさわ、さわさわと、疲れきった耳孔を労わる優しい手触りにますます力が抜けていく。

「ふぅ〜…」

少しだけ頭の中が冷やされて思考がスッキリすると、半助はあの頃よりも大きくなった手の感触をしみじみと想った。

(いつのまにかこんなに大きくなってしまって…)

それは体だけじゃない"気持ち"もだ。利吉の気持ちに本当は気付いている。でもそれを応えるわけにはいかない。だから半助も気付かないふりをしてきた。

"彼のことを愛しているから"

利吉にはうんと幸せになって欲しいと心から願う。それは家族として当たり前の願いだ。できたら伝蔵に孫の顔を見せてあげたいし、半助も利吉の子を可愛がりたい。その気持ちも紛れもない事実だ。

(利吉くんの子なんて絶対可愛いだろうなぁ)

「ふふっ」

その願いを結ぶためにも、利吉自身のためにも、自分の気持ちにはきつく、きつく蓋する。そして利吉の気持ちにもはやくピリオドを打ってあげなければ。手遅れになる前に。

"自分が鬼と化してしまう前に"

だけど、蓋をしたはずの気持ちが、彼に会うたびに、彼に優しくされるたびに苦しく疼く。この疼きは一生蓄積されて生涯解消されることはないだろう。だけどもう少しだけ、今だけでもいいから、後、もう少しだけ

(私だけの君でいて)

半助はすっかりくしゃくしゃになてしまった利吉の服の裾に、すがるように手を伸ばした。

「利吉くん…」

彼には決して聞こえないように口の形だけで愛しい名前を呼んだとき、半助の耳の中へ、ふぅーっと息が吹き込まれた。

「ひゃあああああ!!」

びくんっと大きく半助の身体が跳ね上がった。

「な、ななな何?!」

「仕上げは息を吹きかけるのが相場と決まっているでしょう? お兄ちゃんもよく耳掃除の最後に私にやってくださったじゃないですか」

「そっ、そうだったけど…」

半助が未だに波打つ胸を抑えてどぎまぎしていると、利吉は淡々と半助の体をひっくり返そうと手を伸ばした。

「さ、こっち側終わったんで反対向いて下さい」

「え?い、いやもういいよっ!」

「何を仰ってるんです片側だけじゃ気持ちが悪いでしょう」

「もう充分気持ち良かったです…」

「それは良かった。ですけど、ほら!反対もやりますよ!」

半ば無理矢理反対向きに寝かされると、すぐ目の前に利吉の下腹部があって、半助はどこかいたたまれない気持ちになった。

「えっと…」

「なんです?」

「利吉くんのおなかが…」

「私のおなかがどうかしました?」

「いや…」

知ってか知らずか、どこ吹く風の利吉に半助がますます顔を赤らめていると、もにもにと耳たぶが揉まれ始めて、結局そのまま利吉の膝に縫いつけられてしまった。

「耳掃除始めますよ。私の服の裾で恐縮ですが、怖かったらまた握っていて下さいね」

「…こっちも耳経穴マッサージするの?」

「いや、もうこっちはしません。気持ち良いことだけしますね」

「っ…!!」


続き