寮生活のススメ
"言葉は汚いし怒鳴るし怖いし、すっごく苦手なタイプだったからちょっぴり嫌いだったの。でも、ヒーローになるために真っ直ぐで自分を曲げない所とか、不器用だけど優しいとこもあるってわかって・・"
"気になる様になったん?"
"う、うん・・体育祭で本当に1位とっちゃったとことかなんかもうすごいと思った"
"拘束されとったけどね!"
"1位なのに、本当の1位じゃないから認めないところもすごくかっこいいと思う"
"ひゃ〜・・なんかもうべた惚れやなぁ"
"うっ・・お、お茶子ちゃん・・絶対誰にも言わないでね・・!"
"うん!わかった!名前ちゃんの事応援しとるよ!"
"あ、ありがとうお茶子ちゃん!・・・そろそろのぼせちゃいそうだしあがろっか?"
"そうやね、名前ちゃん爆豪君の事で顔真っ赤やし!"
"も、もう!"
「・・・・・・・・・・・・」
隣の女風呂から聞こえてきた会話に僕は固まった。
「・・・苗字って爆豪が好きだったんだな」
音で二人が外に出たのを確認した後、轟君がしみじみと呟いた。
そう、今の話を聞いていたのは僕だけじゃない、轟君も聞いていた。それだけならまだ良かったかもしれない・・・
「趣味わりぃな」
「あ"ぁ!?めっちゃいいわ!!」
──そう、かっちゃんも聞いていた。めっちゃいいわって・・かっちゃん・・
必殺技を考えてトレーニングをしていたらすっかり遅い時間になっていたので、そのまま汗を流そうと寮の風呂に入った僕の目に入ったのは、静かに湯船に浸かってる轟君と、とても不機嫌そうに目をつりあげながら湯船に浸かっているかっちゃんの姿だった。
(何この最悪な組み合わせ―!?)
僕が入ってきたことに気づいた轟君が「よお」なんて声を掛ける。かっちゃんも僕に気づき「チッ!」と舌打ちをして目がつりあがる。明らかに不機嫌メーターが上がっている
(は、はやくあがろう・・・・)
触らぬ神に祟りなし、これ以上かっちゃんが爆発しないように手短に済ませようと思っていた僕の思いも、隣の女風呂から聞こえてきた会話に叶わなくなってしまうのだった。
「お前どうするんだ?」
「あ?どうもしねーよ!死ね!」
「・・・・俺、苗字に謝ってくる」
そう言って、ザバーッと音を立てて轟君が立ち上がり、お風呂から出ようとしていたので慌てて引き止める
「ま、まって轟君!謝るって何を!?」
「聞くつもりはなかったが、聞いちまったからわりぃと思って」
「苗字さんがかっちゃんの事好きだってことを聞いちゃったってことを!?」
「あぁ。俺達に聞かれたくなかっただろうし」
「待ちやがれてめぇ、俺とデクが聞いてた事まで言うつもりかよ!?」
「言わねぇと苗字に悪いだろ。お前に一番聞かれたくなかっただろうしな」
「ば、ばっかじゃねぇかてめェ!なんでそれがわかっててそういう発想に至んだよ!!」
今回ばっかりはかっちゃんに同意見だ・・・!でもかっちゃんが苗字さんの事を考えて轟君を止めるのは意外だった。いつものかっちゃんならそんな会話が聞こえてきたら「うるせぇ!」と爆発させて中断させると思うんだけど・・・もしかして・・?
こっそりとかっちゃんの顔を見てみると真っ赤な顔をしていた。それが怒りからなのか、のぼせからなのか・・照れなのか僕には判断がつかない
「と、轟君!苗字さんの為を思うなら聞かなかった振りしてあげたほうがいいよ!こういうの、人に聞かれてたってわかるだけでも結構嫌なものだし・・!」
聞かれた相手が想い人本人だったら尚更だ
「そういうもんなのか」
「う、うん!!」
「チッ・・」
轟君を引き止めることに成功したのを確認して、かっちゃんは舌打ちをして風呂から出ていった。
――かっちゃんはどうするんだろう。苗字さんに申し訳ないと思いつつも幼馴染の恋愛事情、もしかして脈アリかもしれないこれからの展開に興味が湧いた。