「一椛、これ聞いて」
「ん、壮馬?」
「俺のCD」
「お…2ndシングルだ」
「うん」

何故だろう、いつも音楽の話をして盛り上がっては時たま一緒にライブハウスに行ったりしているけど。いざ、自分の歌を聞いてもらうのは恥ずかしいじゃなくて緊張してしまう。
これがキャラクター有りきならどれだけマシだろうか、音楽に精通している一椛だから分かる欠点だったり改良点なんか今後の課題にしたいという前向きな気持ちでCDを渡した。

「壮馬の声はさ強いんだけど甘さと切なさがあるよね、私好きなんだ」

珍しく饒舌な一椛はイヤホンを片耳外して俺を見た。

「一緒に聞かない…?」
「じゃあ、」
「ここのさ、サビに向かってく時の壮馬の声がグワッと力強くなるの。それがすごく好き」
「一椛に褒められのなんか慣れないな」
「えぇ…私結構壮馬推しだよ…」
「梅ちゃんより?」
「うん。断然。あの人論外だよ…」

口悪いしさ、とボヤく一椛。
いやぁ、一椛と交戦してる時の梅ちゃん凄く楽しそうでいい顔してるんだけどな。
一椛を揶かったり煽る事が好きな梅ちゃんとそんな梅ちゃんを論破してやりたい一椛、お互いに顔面偏差値トップクラスだから見ている分には目に優しい。

「いいな…歌いたいな…」
「んー、カラオケ行く?」
「お…イイね」
「今度は完パケを持ってくる」
「りょーかい…あ、それまでこのCD借りてていい?」
「え、あぁいいよ」
「なんかね…控えめに言って愛してるって感じ…」
「いやわかんねぇわ」



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