:家庭教師ヒットマンREBORN!
:雲雀恭弥
キーンコーンカーンコーン
鐘の音を合図にして、その敷地内は騒がしい程の活気を取り戻した。男女それぞれが決まった服装で集まり決まった毎日を繰り返す……ある意味学校は牢獄である。
昼休憩が始まってから約2分。きびきび歩けど階下の応接室までは少し距離がある。本日も面倒だと心中ぼやきながら、少し重苦しいその扉を開ける少女がひとり。
「恭弥、入るね」
小さく口頭での入室を断る。しかし当然のように返事は待たない。
堂々たる態度で入った部屋はさすが“応接”室と呼ぶべきか。学校とは思えぬ二人掛けの気品あるソファ、ローテーブル、観葉植物、そして……積み重ねられた書類。
「……まだやってたんだ」
少女は明らかに分かる舌打ちをした。するとそれに気付いたのか、その部屋の主が書類で隠された椅子から立ち上がった。
「やぁ依泉、もう来てたんだ。ちょうど一段落着いた所だよ」
「どーも。書類やけに多くない?」
どちらからともなく広いソファに向かい合わせで座る。そしていつもなら昼までには片付いている紙の束達が、今日は作業机一杯に置かれているのを見やる。
話によるとどうやら昨日、問題を起こした教師がひとり解任されたそうだ。
なんでも校庭で爆破事件を起こしたとか。学歴詐称もしていたらしい。名前は根津銅八郎。
ヒュー、とそれを聞いた依泉が口笛を奏でた。
「あぁ、知ってる。生徒からも教員からも傲慢で嫌われてるんだよね」
根津が爆破?詐称?へー。ふーん。依泉は台詞を単調に読み上げるように言ってから、最後にザマーミロと吐き捨てた。
「なに君。あいつに苦い思い出でもあるの」
「いや……単に嫌いなだけ。不愉快極まりない、草食動物の臭いってヤツ?」
先程から割と平凡な会話が続いているが、少年の名は雲雀恭弥。風紀委員長にしてこの町の実権を握っていたりする不良。応接室を我が物としているのが良い例である。
そんな少年と対等に話し、ましてや彼のテリトリーへの無断侵入が許される依泉のような人間は稀少であり、もちろん普通ではない。
「そういえば依泉、クラスに気の合う人間いないらしいじゃないか」
テーブルにはそれぞれが、具の詰まったお弁当箱を広げていた。二つ共が先程依泉の持ってきたものだが。
「誰から聞いたのか知らないけど。それ、誰のせいだよ」
「ワォ。僕かい?」
「勿論」
「どうして」
忙しない風紀委員と言えど……いや、風紀を重んじるからこそ、昼休みは昼食の時間と決まっている。会話に花を咲かせて食事をする様は、場所にさえ目を瞑れば、立派に普通の昼食タイムである。
「残念な事に幼馴染みの考えが移っちゃったんだよ。恭弥が言う様に群れる奴はウザイってね」
少年は僕の知った事じゃないとでも言うように肩をすくめる。しかし尚も依泉の主張は続いた。
「周りから近付いてこないのは私の背後に恭弥がいると思われてるからだし。口癖も、この性格だって恭弥のせいだ」
「何でも僕のせいにするよね、君」
事実を言ったまで。澄まして言った依泉が、形の良い卵焼きを口に運ぶ。
「それで昼になると毎日応接室に来るのかい?」
「あんなトコで食べたら味落ちるし。恭弥の弁当届けるついでだよ」
彼がお弁当を差し出されるより前に家を出るのは、もうお決まりの事なので誰も慌てる事はしない。単に、依泉の荷物が増えるだけだ。
「別に、食事なら草壁に買いに行かせるから困らないしね」
風紀委員長にとっては昼食抜きよりも委員に遅れる事の方が免れるべき事らしい。いや、買いに行かせるつもりらしいので、どちらも掴み取るつもりらしい。二兎を追うもの一兎をも得ず、なんて言葉は彼には通じないようで、なんだかんだ対抗できてるようで、私も上手い事使われている。
「せっかくおばさん作ってくれるんだから、素直に受け取れ」
命令調の言葉が咎められる事はなかったが、その代わりなのか返事は「頼んでない」と素っ気ないものだった。「あっそ」それに返した依泉の第一声も気がない事が丸分かりである。
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