:D,Gray-man
:神田ユウ
活気溢れる黒の教団、食堂。
静かな廊下を抜けて、エクソシストである神田ユウはちょうど昼食をとる為そこに足を踏み入れた所だった。………その時。
「どいてどいてどいてーっ!」
「うるせぇ、何ご……!」
ズガンッ
ガキィィイン!
突然の大声と共に、神田の先程通った道を猛スピードで走ってきたのは巨大な機械。天辺にちょこんと乗っているkと書かれた白い帽子。形は違えどその特徴的なトレードマークには、嫌でも見覚えがある。
暴走しているのか攻撃を仕掛けてきたそれを、神田は愛刀で止めた。
「……ちっ」
性能は良かったと思われるそのロボットは一瞬にして真っ二つの、見るも無惨なガラクタへと成り果てた。六幻を鞘に収めた神田は遅れてこちらに駆けてきた少女に目を移す。息を切らす彼女に猶予など与える筈もなく、さっさとしろと言わんばかりにショートし黒煙を舞い上げている機械についての説明を要求する。
「はぁ……やっと追い付いた」
「無視かコラ」
「あぁあ神田ってば、コムリン3こんなにしちゃって」
「コムリン3……?」
ピクリとその名前に嫌でも反応する。コムリンとは、確か随分前に室長のコムイが造った科学班お手伝いロボットの事だった筈だ。…………暴走して一度も役に立つ事なく廃棄された迷惑の塊だが。
「コムイの野郎……まだ懲りてなかったのかよ」
神田が呆れて隠すでもなく大きな溜息を洩らすと、その隣で依泉が苦笑した。
「まぁ、室長には悪いけど大事に至らずに済んで良かったかな」
壊れた機械を背景に、仏頂面の神田が良くない、と主張する。ハッキリ言って、あまり合う組み合わせとは言えない。
「お前科学班なんだから、あいつがガラクタ造ってるの気付かなかったのかよ?」
「気付かない」
「気付け」
「無理だよ。私達にあの魔の実験室の様子見とけっていうの?遠回しじゃなくとも死ねって言ってる?」
「…………」
神田は自分でも無意識に眉間の皺が増えた事に気付いた。魔の実験室、確かにあの場所なら仕方がない……かもしれない。何しろそこは室長のプライベートな実験室。あのコムイのみが出入りし使用する、奴専用の部屋だからだ。
普通の精神の持ち主なら、部屋はおろか全体を取り巻く雰囲気にその階にいる事にすら畏負の念を感じる。
……いや、どこにだって物好きはいるものだ。
実際、その部屋を見ようと毎晩のように人の目を盗んで部屋に侵入しようとする者もいるらしい。……計画は全て失敗に終わっているが。
「まーた仕事増えたよ……今日も徹夜か。どうにかなんないのかなぁ、あの人」
あれで真面目なら文句なしの秀才なのに、と依泉は口先を尖らせた。
「暫く謹慎でもすればどうだ?悪さもできねぇだろ」
珍しく打倒コムイ案に積極的な神田に、依泉はフッと自嘲めいた溜め息を溢した。
「駄目だよ、仕事させないと」
罰を与えるなら、寧ろ妹であるリナリーとの接触禁止等の方が良い。一見どうって事ないが、極度のシスコンであるコムイには効果絶大なのである。
「書類以外触らせないとかは」
「……実験室暫く閉鎖?」
「椅子に縛り付ける」
「寧ろ仕事全部室長に押しつけちゃ駄目かな……ってなにコレ、さっきから子供の悪巧み?」
あれ、と依泉が悪知恵思案から抜け出した所で、神田が言い出しっぺは依泉だと主張した。顎に手を添えて依泉は探偵のようなポーズをし、そうだった?と考える。
ド忘れか押し付けかは知らないが、実際のところの言い出しっぺは神田である。
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