:家庭教師ヒットマンREBORN!
:沢田綱吉
キーンコーンカーンコーン
放課後を告げるチャイムが鳴り、長ったらしいSHRは終わる。本来短い筈のそれは、完璧主義者の担任によってLHR並みのだるさを覚えてしまう。
「ツッ君!一緒に帰ろう」
「早っ!」
入学早々外れくじを引いた気分になりながら、ゆっくりと帰り支度を始めようとした直後、教室へ入ってきた明るい声に思わずツッコんでしまう。
「うちのクラスはHRしないからね」と笑う人物に始めの頃は物珍しそうに見ていたクラスメイトも、もうすっかり順応してしまっていた。うん、馴染んでる。
「いや、それにしても階だって違うのに」
本来学年が一つ上の彼女は先輩と呼ぶべき存在だった。けれど物心つく前からの幼馴染みという関係が、呼び名は愚か敬語まで使わせようとしなかった。いや、オレは目立ちたくないからとそうするつもりでいたのだけど、それを聞いた依泉の半泣きになりながらの反論により、それは叶いはしなかった。
「うちのクラスは先生がいい加減だからねぇ」
そう言う依泉の担任は、確かにそのやる気の無さが目立つ人だった。ちょうどオレの担任と足して2で割れば良い割合になりそうな気がする。是非なってほしい。
「帰ろっか」
適当にノートや筆箱を鞄に突っ込んで、待たせていた依泉に話しかければ元気な返事が帰ってきた。
珍しくも何ともない民家が建ち並ぶ中、いつもの様に帰宅ラッシュの大通りから少し外れた脇道を歩く。今日何があったとか、語り手は基本依泉の担当でオレが聞き手に専念して相槌を打っていれば突然依泉が話を反らしてオレに質問をした。
「そろそろさ、中学にも慣れてきた?」
「うん、まぁ」
「友達は?気の合う人いた?」
「えっと……」
友達なんていなかった。話し掛けてくる人物といえば、オレをダメツナとからかう男子かやむを得ない用のある奴かだ。
オレが口籠もっているとそれを察したようで、答えを待っていた筈の依泉から口を開いた。
「まっ。焦らなくてもその内きっとできるよ、気の合う友達!」
「……うん」
「ツッ君てばまだ中学生活始まったばっかりなんだからさ、頑張ってよ!」
景気付けるように声のトーンを上げながら、依泉がオレの背中を叩く。思っていたより強い力で、バシッと。
「うわっ」
「えっ?」
バターンッ!
無防備だったオレの身体はその力に耐えきれず、そのまま前方にめり込むようにして倒れた。女子の力で転ぶオレって一体……!
「う、嘘……大丈夫!?」
隣にしゃがみ込む依泉は顔を真っ青にしてオレの様子を伺う。見たところ外傷はないようだったが、ふと立ち上がろうとした時足の痛みに気付き、その激痛に力が入らないと言えば……
何故か依泉は怪しく目を光らせて、何か思い付いたようにオレの胸ぐらを掴んだ。ちょ…怖いっていうか、何で!?
「ツッ君!痛みを消し去る魔法かけてあげよっか!」
「は……魔法って何!?」
依泉の言葉は時々、何処までが本気で何処からが冗談なのか判断できない。「魔法は魔法だよ!」と楽しそうに言う依泉に何も言えなくなり、事の成り行きを見守る事にした。
「よし、」
依泉は患部である膝に指差すように手を置き、それから空中でくるくると動かしてみせた。ぼうっとそれを見ていたオレは、まさか次出る台詞が誰しも知っているようなあの言葉だとは全く予想もしなかった。
「痛いの痛いの〜、とんでけ〜!」
言いながら依泉は人差し指を空へ向けた。そして満足気に言ったのは「ほら、もう痛くない!」
「……って、えぇえ!?」
絶叫したオレにキョトンとする訳でもまして驚く訳でもなく、期待を込めた依泉の第一声は「叫ぶ程威力あったの?」だった。そんな訳があるまい。
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