「え……今の?」
「うん」
「……痛いの痛いのとんでけ!?」
「うん」

自信に満ちた依泉の返事に「それおまじないじゃん!」とワンテンポ遅れてツッコミを返す。「まぁそうだね!」なんて意外にもケロリと認める依泉には唖然とする他ないのである。

「でも効いたでしょ?」
「効くわけないだろ!そんな子供騙……し…………え?」

言いかけて、気付いた。そんな馬鹿な事があるものか。どうしたのかと此方を覗く依泉に言いたくないような気がしないでもないのだが、その変化を口にする。痛みが無くなっていたのである。

「成功?やった!」
「え……何でぇえ!?」

握り拳で喜ぶ依泉は、最早不思議なんて言葉だけでは片付けられない。エスパー!?

「ふっふっふっ!それはね」
「な……なに?」

突然依泉が不気味に笑いだす。その頬は余程嬉しいのか、緩みに緩んで正直もうニヤついている様にしか見えない。

「人の脳っていうのはね、案外単純だったりするんだよ」
「……は?」

突然過ぎて意味が分からない。依泉の目がさっきより濃くキラリと光った。その表情との相乗効果は、はっきり言って不気味だ。得意げに語る依泉の説明に理解できるようなできないような。
つまり、こういう事だ。結論から言えばそれは魔法でも何でも無く、ただ単に“オレの脳が勘違いを起こしているだけ”らしい。

突っ込んだ話、先ず依泉は「魔法」と云う非現実的なワードを口にした。それが思考を混乱させ、次に行う「魔法」からリアリティーを一掃させる。「もう痛くない」と言われれば痛くない。脳はそれをすんなりと受け入れ、誤った信号を送られた身体は思い込みで痛みを相殺してしまう。
結果見せかけだけの「痛いの痛いのとんでけ」にミラクルパワーが秘められたように思った訳だ。

謎解きは以上。依泉はサイコな力を手に入れた訳でも、勿論魔女になった訳でもなかったのである。
「心理作戦の勝利だね!」と何の勝ち負けかは理解に苦しむが、誇らしげに胸を張った彼女の言う通りどちらと言わずとも心理学に乗っ取った理論であった訳だ。

「だから人間は暗示とかに簡単にかかるのだよ、ツッ君」
「……まぁ、なんとなくは分かったけど」

そう。分からなくはない……けれど、納得いかないと言うか何と言うか。煮え切らないオレを差し置き偉そうに分かれば良いと言う依泉から、すっと利き腕を伸ばされる。

「いつまでも道に座ってないでほら、帰るよ」

見上げればまだまだ昼中の太陽をバックにして、にっこりと優しい笑顔がこちらを見ていた。有無を言わさぬそれに気圧され、オレはその手を借りる事にする。

ふふっと笑った依泉の言葉は爆弾だった。

「でもこれ、普通ちびっこ位にしか効かない筈なのに……ツッ君てば単純!」
「な……っ!」


おまじない

平凡な彼が黒スーツの赤ん坊と出会うまで、あと1ヵ月。

‐‐‐‐‐‐
精神年齢の低い中学生2人の話でした。
脳がどうとかの話は管理人の勝手な理論なので、真に受けないよう注意です!


執筆2008.02.29.fri
加筆2009.03.22.sun

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